「葛根っ子」
加 藤 高 穂
ずっしりと土の匂ひの葛根かな
かつて、草茫々の荒れた庭が広がる一軒家を借りたことがある。そこを畑地となすべく、妻は山鍬を、私は鶴嘴を振るい、土を掘り起こしていたら、大きな葛の根っ子に行き当たった。
何年もの間、土の中にあって、蔓や葉っぱを支えつつ誰の眼にも触れることのなかった葛根を掘り出し、両手に抱えた時の重みに、得も言えぬ感動を覚えたことがある。
この人目に触れぬ泥まみれの根っ子のお蔭で、毎年、立派な葛の花が咲き出していたのだ。世の中は存外、こうした人々の蔭の働きによって破綻を免れ、平穏無事に動いているのかも知れない。
相田みつを氏は、『一生感動一生青春』という本の中で、「遺産相続の《相続》。親の作った財産を子供が貰うのが相続のように思うでしょうが、元の意味は、相(姿)を続けること。師匠の仏道精進する姿、生きる姿を弟子が続けることです。つまり、努力を続けることです。
形ある財産を作るためには、その陰で親は汗水流して働いたわけです。その汗水流す努力を続けること、これが本当の相続です。苦労なしに親の遺産を貰うことじゃないんです」と語りかけておられる。
思えば、私どもが生かされている陰には、親や師を始めとする、どんなに沢山の先人の汗と努力、祈りがあったことか。花を、葉を、茎を支え生かすために、目に見えない所で、泥まみれになって働いている根っ子の姿に、尊い生命の働きを拝するのである。
2016.11.20.