「帰り花」

                  加 藤 高 穂

 

   たんぽぽや野路の光と見えにけり

 

   野辺送る道たんぽぽの帰り花

 

   返り花帰らぬ人へ手向けたり

 

 帰り花とは、小春日和に誘われて、春に咲く草木が季節はずれの花をつけること。主にサクラについていうが、ツツジやヤマブキ、タンポポなどにも見られる。花がほとんどない季節だけに、自然からの授かりもののように思えると、『歳時記』に出ている。

О兄の告別式の日、火葬場にも同行させて貰った。晴天に恵まれたとはいえ、流石に初冬の風は冷たい。親族の方と一緒に送迎バスに乗り込むと、郊外にある焼場に向かう。

町中を抜け、人家も疎らとなったあたりから、上り勾配の田舎道にさしかかった。車は、狭いでこぼこ道をゆっくり進む。前方の席にひとり坐らせて貰い、何を見るともなく窓に移ろう景色を眺めていた。

 その時である。道の傍らに咲く、黄色い小さな花が目に入ったのだ。「あっ!」と振り返ったときは、もう遅かった。花は後方に去り、確かめようもない。恐らくたんぽぽの花だったろう。

 春先から初夏にかけ、白や黄色の花を咲かせる。鼓草とも呼ばれる、あの丸っこい光をかかげたような、愛らしいたんぽぽの花。その小さな花が、寒空の下、自ら手向け花となり、道辺の光さながらに人知れず逝きし人を、また故人が愛してやまなかった人たちを見送っていたのである。思いがけないイエス様からの贈物に思えて、ほのぼのとしたものを受けしめられたのだった。

〔2017.1.20.〕