「コスモス」

            加 藤 高 穂

 

     秋の日やシャンパングラスの泡弾け

 

    コスモスの風花色に染まりけり

 

 久々にオードリー・ヘップバーン主演の映画『ローマの休日』(1953年)をビデオで観賞した。

 ローマに滞在していた某国の王女アンは公務に疲れ、ある夜、自由を夢見て公邸を出奔する。街中を歩く中、侍医の処方した睡眠薬が効いて、ベンチの上で眠りに落ちてしまう。

通りかかった新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)に保護され、彼のアパートで無事に一夜を過ごす。

だが、ラジオや新聞報道で、ジョーはこの娘がアン王女と知り、カメラマンの友と一大スクープをものにすべく、王女と共にローマ見物の心楽しい一日を過ごすことになった。二人の間に恋が芽生えるものの、所詮結ばれぬ恋として相別れ、ふたりの胸に永遠に秘められることになる。

アン王女を演じるオードリーの、清らかで気品ある美しさと奔放な姿は、まさにぴったりの役柄だった。

若き日の彼女は、バレエを学ぶ傍ら対独レジスタンス運動にも参加していた。楚々とした佇まいの中に、芯の強さを思わされる。

 今、近くの河原では、白やピンク、深紅色の花をつけたコスモスが、さわやかな風と遊び戯れ、楽しげに揺れている。

遠い日、この可憐な花が、台風に吹き倒された中から身をもたげ、咲き出しているのをみて、驚いたことがあった。打ち倒されても、土に接した茎から根を出し、花を咲かせるのだという。

たとい倒されても品位を失わず、明るく美しい花を咲かせるコスモスに、忘れてならぬ心を教えられる。

ふと「迫害に会っても見捨てられない。倒されても滅びない」と語るパウロの言葉を思わされた。