8:正規計量とローレンツ群(1)
これまでスカラーδS(-)<2>は対称なテンソルN(-)[ik]で作られていましたが、今度はこのテンソルを接続の主要成分である、実在世界の中に存在しているスケールの組を使って求めてみましょう。このテンソルは測定法として選び出されたスケール系の性質を記述しているので、このテンソルの構造を接続係数からではなく、スケール系の性質を使って直接組み立てる場合は、いかなる矛盾も発生しません。
さて、標準スカラー・パラメーターの微分の2乗としてδs(-)<2>を使うと、私たちは計量テンソルとして、つまり対称な計量テンソルとしてN(-)[ik]を使うことが出来ます。テンソルN(-)[ik]の中では、理想的には完備テンソルr(-)[ik]の中では、変位ベクトルのトレースが特別な意味を持ち、これがこれらのテンソルに私たちの実在世界のモデルに関する特別な万能的な性質をもたらしています。
たとえば、N(-)[ik]p<i>q<k>型の集合を考えましょう。なお、p<i>,q<k>は任意のベクトルです。言うまでもなく、この型の式はスカラーを表わしています。このスカラーはこれらのベクトルのスカラー積と呼ばれています。また、2つのベクトルの直交条件をこれらのベクトルのスカラー積がゼロに収束することとして定義することが出来ます。このようにして定められたベクトルのノルム、つまりベクトルの特別な場合としてのスケールのノルムは不変量でスカラーです。
なお、それぞれの座標系における当面のスケールの値は定義にしたがってつねに1です。この違いはつねに注意しなければなりません。スケールの値は次元数で、成分が唯一ゼロではない、つねに1に等しい値になっています。これに対して、スケールのノルムは不変量、かつ無次元数で、必ずしも1に等しくありません。
ノルムが1に等しい値を持つスケールは、あらゆる可能なスケールの中から自然な方法で選び出され、ノルム化(正規化)されたスケールです。このようなスケールとして、特定の対象が存在する軌道に接し、また次式で表わされる標準パラメーター、すなわち、
s(-)=∫{N(-)[ik](dx<i>/dt)(dx<k>/dt)}<1/2>dt,
つまり、この式に属するベクトルがあります。この式は「6:接続対象の主要成分と正則成分(4)」にてすでに導入され、私たちはこのパラメーターを正規標準パラメーターと呼んでいます。
完全に理想的な場合、スケールは実在世界のそれぞれの点とそれぞれの方向に存在しています。このように、それぞれのアフィン接続空間では接続によって自然計量が定められています。ここで強調しますが、私たちが実在世界を描像するさいにここで使っている空間はリーマン空間ではありません。たとえテンソルN(-)[ik]が接続成分とこの微分形ではっきりと記述され、接続と一致していたとしても、これはリーマン空間の場合に発生するものと性質が異なっています。そればかりか、このテンソルには何等かの有効な条件も付けられてなく、またある地点のある方向におけるスケールのノルムは任意の符号とゼロを含めた自由な値を取り得るのです。
空間がリーマン空間であるためには、計量テンソルが空間のいたる所で共変的に一定であって、またねじれテンソルもいたる所でゼロに等しくなければなりません。容易に理解されるように、実在世界のモデルが完全に理想的である場合、計量テンソルは実際に共変的に一定です。
実のところ、スケール系を形成する物理学的対象が存在している部分空間においては計量テンソルは共変的に一定でなければなりません。なぜなら、このテンソルはこれらのスケールの性質であり、また理想的なスケール系がこの系によって記述される実在世界のいたる所に存在しているからです。もう一度確認しますが、理想的である場合、計量は実在世界のいたる所で共変的に一定です。