14:相対運動(1)
運動を記述するためには2つ以上の対象が存在しなければなりません。運動は一般的に相対的で、一方の対象は他の対象に対して運動しているからです。運動の時空間的記述は本質的に言って対象が存在する部分空間と関連していません。私たちは少なくとも2つの対象を考察するのみです。
ここで、局所的な観点に立って、2つの対象の座標の差がほとんどないものと仮定しましょう。次に、2本の曲線を、1本は対象1が存在する部分空間の中に、もう1本は対象2が存在する部分空間の中に引きます。ここで、対象1の観点から対象2の内的性質の変化を記述しましょう。ただし、対象1と一緒に立っている観測者は曲線1に沿って標準スカラー・パラメーターが限りなく微小な量dsだけ変化するように移動するものとします。また、私たちの目的のために変化し、かつ測定できる性質として反変ベクトルのΔ密度℘<i>を選びましょう(記号<i>はiが℘の上付きであることを意味しています)。こうすると、結果として与えられる変化はD℘<i>/dsとして記述されます。これは曲線1と結ばれた幾何学的対象でもあります。なお、℘<i>は曲線2上に存在していますから、D℘<i>/dsを計算するためには℘<i>を曲線2から曲線1に2回移動させなければなりません。
では、D℘<i>/dsを具体的に求めてみましょう。はじめに、説明にしたがって作図しましょう。
まず、2本の曲線を適当な間隔、適当な長さでほぼ平行に引きます。そして、上の曲線を対象2、下の曲線を対象1とします。次に、対象2の曲線上に左から順に適当な間を空けて点0と2を取ります。それから、点0から真下に向かって直線を引き、対象1の曲線と交わった点を1とします。同様にして、点2からこの直線とほぼ平行に直線を引き、対象1の曲線と交わった点を3とします。
次に、対象2の曲線上の点0から点2の方向(対象1の曲線上では点1から点3の方向)への演算をDとし、対象2の曲線上の点0から対象1の曲線上の点1の方向(同様に、対象2上の点2から対象1上の点3の方向)への演算をD(-)とします(なお、記号(-)は記号-をDの上に引くことを意味しています。ただし、これはDと方向が異なることを意味しいるにすぎません)。
ここで、点0における反変ベクトルを℘<i>とします。すると、点2における反変ベクトルはこれにDの演算を加えることによって℘+D℘<i>となります。次に、点3における反変ベクトルは点2における反変ベクトルとこれにD(-)の演算をした反変ベクトルを加えることによって次式で与えられます。すなわち、
℘<i>+D℘<i>+D(-)℘<i>+D(-)D℘<i>.・・・(1)
これは、点0での反変ベクトルが点0,2,3を通って点3に達した場合の反変ベクトルを意味しています。
これと別に、点0,1,3の経路を通って点3に達する場合があります。この場合は、まず、℘<i>にD(-)の操作を加えて点1での反変ベクトルとして℘<i>+D(-)℘<i>が与えられます。次に、点3での反変ベクトルですが、これは点1での反変ベクトルとこれにDの操作を加えた結果を足すことによって与えられます。すなわち、
℘<i>+D(-)℘<i>+D℘<i>+DD(-)℘<i>.・・・(2)
ここで、経路{0,2,3}と{0,1,3}を通って点3に達した時の値℘<i>の差D℘<i>を上記(1),(2)式から求めると、近似的に次のようになります。すなわち、D℘≒D(-)D℘<i>-DD(-)℘<i>.
こうして、D℘<i>/dsとして次式が与えられます。すなわち、
D℘<i>/ds≒lim(Δs→0)(D(-)D℘<i>-DD(-)℘<i>)/Δs・・・(3)
≒[R<i>[jkl]℘<l>-F[jk]℘<i>-2T<p>[jk]∇[p]℘<i>](dx<k>[2]/ds)Δx<j>[12].
私たちはここでは近似的な記述をしていますが、それは座標的距離Δx<j>[12]はベクトルではなく、また、たとえそれが小さいとしても、無限小ではないからです(なお、xの記号[12]ですが、これは数字12がxの下付きであることを意味しています)。しかし、上の(3)式は大切な基本的な式であって、右辺の項は物理学的な力の概念に対応していること、テンソルR<i>[jkl]とF[jk]は場の強さとして解釈すべきであることを私たちに示しています。したがって、接続は度々話しているように、統一された物理学的場のポテンシャルなのです。
曲率テンソルの反対称縮約F[jk]は(3)式では独立した項になっています。なぜなら、私たちは密度を性質が変化するものと見なしているからです。ただし、純粋なテンソルの場合、この項は存在しません。なぜなら、スカラー密度の場合、この項は然るべき方程式の中に入っているからです。
ここで式(3)をベクトル密度の代わりに接線ベクトルdx<j>[2]/dsに応用し、Δx<j>[12]→0とすると、結果として与えられる方程式は正確な式となり、かつ次のような測地線の方程式となります。すなわち、
(D/ds)(dx<i>/ds)=0.
これは、私たちの相対運動の記述に矛盾がなく、つじつまが合っていることを示しています。ただし、境界領域での静止の記述は含まれていますが、内的観点からのそれ自身に関する運動は入っていません。