1:幾何学的対象と次元数(4)

 

 実在世界のそれぞれの点では座標の他に、測定する方法によってその点やその点と隣り合う点との関係を特徴付ける次元数の組が決定されます。

 それぞれの点の新しい性質を測定するために新しいスケールを導入することが出来ます。しかし、この方法はつねに一貫しているとは言えません。もし新しいスケールがすでに存在しているスケールで測定できる場合、この古いスケールの必要性はありません。ところが、新しいスケールが重要であって、しかもすでに存在するものに属していない場合、これは、古い測定法が実在世界を適切に再現していないということ、理想的な方法とは言えず、次元数を増やさなければならないということを意味しています。

 このことから、点の性質を記述する組の次元数の量は、それぞれの理想的な座標系の場合と同じく、許容される変換の不変量になっていることが分かります。このような次元数の組が多様体では幾何学的対象になっているのです。

 変換の法則によると、一方の座標系から他方の座標系に移行する場合(一方の測定法から他方の測定法に移行する場合)、幾何学的対象はテンソルやテンソル密度等に分類されます。幾何学的な対象に関してはリーマン幾何学の基礎コース等に記述されていますので一読をお勧めします。ただ、幾何学的対象でここで議論しなければならない新しい性質が1つあります。なぜなら、この性質は普通は数学のテーマなっていないからです。それは「私たちが実在世界を描像する場合、幾何学的世界はすべて次元的対象と見なさねばならない」ということです。

 ここでもう一度、幾何学的対象は次元数の組で表され、一般に成分が異なると次元が異なっている、としましょう。このよく出来た法則を素直に受け入れますか。それとも、これは数学的に矛盾しているので、数学の範囲外の問題とすべきでしょうか。

 もっとも単純な対象としてスカラーがあります。これはあらゆる座標系の中に一様に存在する数です。したがって、この数はスケールの選択に依存せず、無次元数でなければなりません。これは、たとえば、ある一定のタイプの対象を計算した結果として与えられます。たとえば、すでに話したことですが、測定の結果として、このような数は同じ性質の2つの対象を同じスケールで測定した値の比を取るといった間接的な方法でも求められます。

 次に、簡単かつもっとも頻繁に使われる対象として反変ベクトルがあります。次元の問題を考察するさいに本当にうまく導入されたとてもシンプルな例と言えます。ある点から無限小のdx<i>だけベクトルを変位させただけなのですから、明らかに、それぞれのベクトルの成分の次元は対応する座標の次元と一致しています。すなわち、

 [dx<i>]=[x<i>].

 座標変換するとき、明らかに、この関係は保存されます。すなわち、

 [dx<i'>]=[(∂x<i'>/∂x<i>)dx<i>]=([x<i'>]/[x<i>])[x<i>]=[x<i'>].

 この関係式から、それぞれの反変添え字が幾何学的対象の成分と対応する座標(スケール、測定単位)の次元とを結び付けていることが分かります。

 任意の共変ベクトルp[i]の次元は、p[i]dx<i>がスカラーで、無次元数であるという事実から求められます。すなわち、

 [p[i]dx<i>]=[1].

 したがって、これより、

 [p[i]]=[x<i>]<-1>.

 これと同様の考察によって、任意の幾何学的対象の共変添え字が、対応する座標(スケール)の次元に-1の指標を付けた次元と結び付いていることが分かります。

 幾何学的対象の変換法則によって、対象の量や方向、名前といった成分と変化する測定単位とが一致するようにつねに維持されています。

 たとえば、2つの共変添え字と1つの反変添え字を持つテンソル成分T<i>[jk]は次のような次元を持っています。すなわち、

 [T<i>[jk]]=[x<i>][x<j>]<-1>[x[k]]<-1>,

 [T<i'>[j'k']]=[x<i'>][x<j'>]<-1>[x<k'>]<-1>.

 重み+1の基底スカラーΔ密度ℛは次の次元を持っています。すなわち、

 [ℛ]=[x<1>]<-1>[x<2>]<-1>...[x<n>]<-1>.

 ここでは、任意の重みのテンソルΔ密度の次元の逆数の積の形で表していることを意味しています。

 また、スカラーの他に多様体にとって大切な無次元の対象が3つ存在しています。クロネッカー・デルタのテンソルδ<i>[j]が1つ、それから2つのΔ密度のn次元ベクトル、つまり、重みが+1の反変密度ℰ<ij...k>と重みが-1の共変密度ℰ[ij...k]がそれです。

 テンソルδ<i>[j]はスケール系をそれ自身の系で測定した結果を表しています。重み-1のスカラーΔ密度と反変n次元ベクトルは当面の単位系によって測定されたn次元の体積の形をしています。したがって、Δ密度の両方の基本的なn次元ベクトルの比を取ると、1に等しい別の形のスカラーが与えられます。

 幾何学的な対象の他に、2つの(単位)座標系と関連した次元を持つ「中間の対象」が存在しています。変換行列∂x<i'>/∂x<i>とその行列式Δがそうです。これらは2つの測定法の単位の間の比とこれらの基底体積の比を表しています。これらの次元は次のように記述されます。すなわち、

 前者は、[x<i'>]/[x<i>].

 後者は、[x<1'>][x<2'>]...[x<n'>][x<1>]<-1>[x<2>]<-1>...[x<n>]<-1>.