響人の舞台『楽屋~流されるものは やがてなつかしき~』の感想です。
会場はAPOCシアター(千歳船橋)です。
沢山の間違いとネタバレ、激しい私見をお許し下さい。
四畳半ほどの広さの菱形◇の舞台は『署名人』と同じく、天井から床までを、10本ほどの鉄パイプに囲まれています。
『署名人』では監獄だった場所が、女優の楽屋に変わっています。
物語が始まると、舞台の奥に作られた更衣室の姿見に向かって、里アンナさんが歌い始めます。
(←里さんは、茶色のロングヘアです。
天使のような白いドレスを着ています。
彼女は、この楽屋を見守る精霊のような印象です)
里『日々のいのちの営みが
ときに あなたを欺いたとて
悲しみ又は いきどおりを
抱かないでほしい
こころは いつも ゆくすえのなかに生きる
そして流れ去るものは
やがて なつかしいものへ♪』
島唄のような美しい歌を歌いながら、楽屋の回りを歩き、去って行く里さん。
やがて音楽は、優しいインストゥルメンタルに変わります。
その中で、現在上演中の舞台、チェーホフの『かもめ』の主演女優(波咲まこさん)が、ニーナの台詞を独白します。
(←姿見に向かって話す彼女は、金髪のかつらを被り、ウールのトレンチコートを着ています)
そのとき、同じ楽屋の中では、舞台の右端と左端で、女優A(末次美沙緒さん)と女優B(穴田有里さん)が、無言で黙々とメイクをしていました。
(←末次Aさんは、グレーの縞の和服を着ています。
額には、ターバンのように赤い手拭いを巻いています。
気っ風の良さそうな中年女性です。
穴田Bさんは、ショートボブの髪をカーラーで巻いています。
グレー地に小花模様のワンピースを着ています。
若くてチャーミングな女性です。
首に赤いストールを巻いています)
二人が白粉をパフではたくと、空気中にパウダーが飛び散っています。
実は、二人は既に亡くなっている幽霊で、楽屋に住み着いているのです。
(←生きている人には、彼女たちの姿は見えません)
開演時間になり、主演女優が楽屋を出て行くと、二人は自分たちの日の当たらない役者人生を嘆きます。
そして、生前に役に恵まれなかった二人は、演じてみたかった役を演じます。
ですが、女優Bのマクベス夫人は、アニメの魔法少女のようでした。
その後『かもめ』のニーナも演じますが、マクベス夫人と同じ不思議キャラになっています。
(^◇^;)
女優Aは、戦争中に男優が徴兵されて人手不足になったとき、その他大勢の博徒として出演した『斬られの仙太』の主役を演じます。
ですが、彼女の演技も前時代的で大袈裟です。
(´д`;)
確かに、生前に役に恵まれないことに納得のいく二人なのですが、憧れの役を演じる彼女たちは、とても楽しそうです。
ですが、いつしか二人は、互いの死因について喧嘩になってしまいます。
女優A「男のために自殺する女優なんて最低!」
女優B「そりゃ、あんたはいいさ!
世間様は、戦争の傷あとには、甘い感傷を持ってらっしゃるからね!」
女優A「うるさいわねぇ、どぶねずみ!
(;`皿´)」
女優B「なにさ、とげねずみ!!
(#`□´)」
女優Aは、額に赤い手拭いを巻いていますが、それは空襲で亡くなったときの傷だったのです。
そして、女優Bが首に巻いている赤いストールは、頸動脈を切って自殺した傷でした。
悲しいエピソードなのですが、言いたいことを言い合って喧嘩をする二人の間には、コミカルで暖かい空気が流れています。
そのとき、20代の若い女優キー子(遠山さやかさん)が、そっと楽屋に入って来ました。
なぜか彼女は、使い古した白い枕を抱えています。
(←キー子は、肩より下の長さのストレートの茶髪です。
スカートもブラウスも、その上に着たレースのニットも全て白です。
足元は裸足です。
あどけない少女のような無垢な雰囲気です)
舞台後方の更衣室の前に座り、無表情に枕を抱えているキー子。
やがてキー子は、突然に笑いだし、独り言を言い始めました。
(←女優AとBは、ぎょっとしています。
(°д°;;))
キー子「…ママ、あたしの手紙、読んでくれた?
あたし、やっと健康になれたのよ。
健康には、なんたって睡眠が一番。
…あたしは健康そのもの。
だからママ、安心して…」
心を病んでいる彼女の言葉に怯えた二人は、何も見なかったことにして、慌ててメイクを再開します。
( ̄ー ̄;)
そのとき、舞台を終えた主演女優が、楽屋に戻って来ました。
赤いカーテンを引いて、更衣室に隠れるキー子。
ですが、主演女優は彼女に気がつきます。
そして、病気が治ったのなら、以前のようにプロンプターとして、戻って来て欲しいと頼みます。
(←プロンプターは、役者が台詞を忘れたときにフォローする裏方です)
ですが、心の病気から幻覚を見ているキー子は、ニーナの役は、始めから自分のものであり、主演女優は代役だと思い込んでいます。
彼女に役を返して欲しいと頼むキー子。
驚愕して、舞台後方に逃げて行く女優AとB。
ヽ(>д<;)ノ
キー子の狂気に動揺しながらも、主演女優は更衣室で衣装を脱ぎ、白いガウンに着替えて出てきます。
キー子は彼女に食い下がります。
ニーナは、作者のチェーホフが私のために書いてくれた役だと。
主演女優「(チェーホフは)70年前に死んじゃってるの!」
キー子「それ、たんなる噂でしょう。
おとついだったかしら?
電話でお話したんです」
そしてキー子は、主演女優に使い古しの枕を押し付けようとします。
さらにキー子は、彼女のために、精神科の病室を予約してきたので、ゆっくり休養して下さいと、あどけない笑顔で迫ります。
鏡前に座り、ドーランを落としながら、唖然としている主演女優。
キー子は畳み掛けます。
キー子「女優って、報われるものの少ない職業ですものね。
なにもかも犠牲にしちゃって…。
しかも日に日にみずみずしさを失っていく肉体にムチ打って、ひたすら求めるのは、絵空事の愛ばかり…。
だから、あたし思うんです!
こんな残酷な仕事に耐えられるのは、若い時だけだって…」
若いキー子は、20年間トップを走り続けている40代の主演女優に、恐ろしいことを言い出します。
主演女優は、混乱しながらも、正面からキー子に向き合います。
主演女優「…あたしは、残酷な仕事であることは百も承知で、女優という職業を選んだの。
選んだからには、そこに残酷な部分が山とあったって、かまいやしない。
だったら、その残酷さを、とことん味わってやるだけよ。
ばばあになったって、かまうもんか!
あたしは、残酷さに餓えてるんだから!」
幻覚を見ている後輩に対して、主演女優は誠実に本音を語ります。
ですが、キャリアが浅いキー子には『残酷さ』の意味が理解できません。
キー子「…やっぱり疲れてらっしゃるんだわ。
予約してあるんです、病室!」
無邪気に微笑むキー子。
主演女優「出ていって!
…ねぇ、分かってよ。
怒鳴ったりして、みじめになりたくないのよ。
お願い、帰って…。
…本当に疲れてきたわ。
一人にして…」
背中を丸めて椅子に座った主演女優は、哀願するように呟きます。
ですが、キー子は 『疲れてきたわ』の一言に、待ってましたとばかりに飛びつき、自分のお古の枕を差し出します。
主演女優「やめてったら!!」
ついに忍耐の限界を越えた主演女優は、傍らにあったビール瓶で、キー子の頭を殴ってしまいました…。
あと一回、続きます。
読んで下さって、本当にありがとうございます。