「少年十字軍」感想(1)居させてくれる場所がない。 | 1904katuoさんのブログ

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スタジオライフの舞台『少年十字軍』の感想です。

沢山の間違いとネタバレ、激しい私見をお許し下さい。



(1212年のフランスの物語です)


舞台の左右には、汚れて色褪せた白地に赤い十字の旗と、ぼろぼろになった赤い幕が吊るされています。

舞台後方には、高い段差があり、その後ろの石壁には、十字や翼、薔薇の花、蝶やこうもりなどが、レリーフのように彫られています。

(←本物の石ではありませんが、遺跡のように美しいです)


物語が始まると、暗闇の中、激しい雷の音と、恐ろしい音楽が鳴り響きます。

その中を、右腕に怪我をした少年が、舞台から飛び降り、客席通路を走って逃げて行きます。


狼のような少年の名前はルーといいます。

(Fチームは田中俊裕さん、Nチームは千葉健玖さんのダブルキャストです)


彼はくしゃくゃな黒髪で、茶色の服の上に、動物の毛皮を身につけています。

一人で森に住む、狼のような野生児です。


ルーが逃げた後、彼を捕らえるために、二人の森番が現れました。

彼らは、領主の命令で、所有地である森に住み着いているルーを処刑しようとしています。


ですが、国内の何処にも、誰の物でもない土地などありません。

森番の一人は、孤児であるルーに同情的です。

もう一人の森番は、野生児のルーよりも、貧しい暮らしに耐えている農民たちの方が可哀想だと反論します。


場面は変わります。

村に住むリュック(石飛幸治さん)のもとに、仲介屋(笠原浩夫さん)が来ています。


冬が来れば、農民の仕事は無くなります。

それでも、重い税金を払わなければならないことを嘆くリュック。


そこに薪にするための小枝の束を抱えて、娘のアンヌ(宇佐見輝さん)が帰って来ました。

(←アンヌは、金髪に近い栗色の髪の可愛い女の子です。

くすんだパステルカラーの服を着ています)


父のリュックが、仲介屋に自分を売ろうとしていることを知って、アンヌは激しいショックを受けます。


アンヌ「やだ!やだ!やだ!

私は、まだ13だ!

領主様は、15になるまで待ってくれるって…」

リュック「…アンヌ、分かってくれ。

これしか、方法が無いんだ…」

アンヌ「そんなの嫌だ!!」


走り去るアンヌ。


リュック「アンヌ、分かってくれ!

生きてけねんだよ…」


娘の後ろ姿に、力無く呟くリュック。

彼の言葉には、怒りや悲しみを通り越した、深い諦めが滲んでいます。


場面は変わります。

父のもとから逃げて来たアンヌは、仲良しの羊飼いの少年、エティエンヌに会いました。

(←エティエンヌは、Fチーム・藤森陽太さん、Nチーム・久保優二さんのダブルキャストです。

金髪でアンヌと同じ淡い色彩の服を着ています。

天使のように綺麗な少年です)


エティエンヌは、もうすぐこの村との契約が切れるため、冬になる前に、次の村に移ることを告げます。


アンヌ「私も行きたい!

この村じゃない所に!!」

エティエンヌ「…止めときな。

俺たち羊飼いの階級は、あんたたち農民以下だ。

賤民あつかいだもんな…」


舞台の前方に立つエティエンヌとアンヌ。

そのとき、舞台後方の高い段差の右側では、回想シーンが始まります。


十数年前、エティエンヌの生まれた村は、盗賊団に襲われ、村人は皆殺しにされました。

仕事を求めて村に来た羊飼いのクロードは、酷い惨状に愕然としています。

(←クロードは、Fは牧島進一さん、Nは曽世海司さんです)


そのとき、殺された村人の遺体の下から、乳児の泣き声が聞こえてきました。

クロードは、乳児を庇うように亡くなっていた村人の遺体の下から、生まれて間もないエティエンヌを見つけます。

困惑しながら、エティエンヌを腕に抱くクロード。


クロード「血の海に浮かんでたか…。

それにしては、まともな顔をしてるじゃないか。

いや、それ以上だ。

キリストのような顔をしてるじゃないか。

…こいつは悪魔だな。

ミルクの代わりに、血を飲んで生き延びやがった」


その後、クロードはエティエンヌの親代わりになりました。


ここで回想は終わります。

エティエンヌは、辛そうに呟きます。


エティエンヌ「俺は悪魔なんだ。

ミルクの代わりに、血を飲んで生き延びたんだから…」


アンヌも悲しそうに頼みます。


アンヌ「…この村を出て行くときは、必ず私も連れて行ってね」


自分の出生と賤民としての立場を思い、アンヌに約束が出来ないエティエンヌ。

そのとき、アンヌの幼い弟のピップ(浅川拓也さん)が、苦しそうに這って来ました。


ピップ「お姉ちゃん、お腹が痛い…」


エティエンヌは、ピップを仰向けに寝かせると、腹部に手を触れ、牧杖を天に向けて祈ります。

すると、ピップの痛みは無くなり、彼は元気を取り戻しました。


ピップ「お姉ちゃん!痛くなくなった!」


感謝して、弟を抱きしめるアンヌ。

(←浅川さんは、結構背が高いのですが、本物の小さな子に見えました。

無邪気な笑顔は、純粋な幼い子供そのものでした)


エティエンヌには、人の病気や怪我を癒す、不思議な力があったのです。

(←その代償に、人を癒した後、エティエンヌは重い疲労に襲われます)


その後、孤児のアントン(澤井俊輝さん)が、親友のトマ(若林健吾さん)を支えながら登場します。


アントン「エティエンヌ、助けてくれ!

トマが死にそうだ!」


一週間前から熱を出し、動けなかったトマは、魚を捕るために川に入ったのです。


アントン「川の水は冷たい。

入れば死ぬに決まってるじゃないか!」


アントンは、トマの無謀な行動を叱りました。

ですが、トマは覚悟をしていたように、苦しい息で話します。


アントン「…この一週間、ずっとアントンが物乞いをして、おいらを助けてくれた。

…魚が捕れれば、アントンの役に立つ。

おいらが死んでも、アントンの役に立つ…」


過酷な状況の中で、彼らは必死に互いを生かそうとしていたのです。


エティエンヌはトマを横たえ、胸に手を置きました。

そして、牧杖を回して天に向けます。

その瞬間、光が溢れ、トマは回復し起き上がりました。


アントン「トマ!トマ!」


泣きそうな顔で、トマを強く抱きしめるアントン。

(←澤井アントンは気が強く、若林トマは穏やかです。

二人とも18歳以上のはずですが、本当に十代前半に見えます。

二人の間からは、ずっと助け合い、寄り添って生きてきた歳月が感じられました)


次の瞬間、エティエンヌの身体が、まばゆい光に包まれました。

舞台上は、神々しい光が溢れます。

茫然としながら、奇跡のような体験を語るエティエンヌ。


エティエンヌ「…大天使ガブリエルに抱かれた…」


驚く子供たち。

そして、その奇跡が起きる瞬間を、修道士フルク(船戸慎士さん)が目撃していました。

(←フルクは、黒ずくめの法衣を着ています。

40歳くらいの大柄な男性です)


彼は、エティエンヌが神の啓示を受けたと叫びます。

そしてフルクは、神はエティエンヌに、異教徒の手から聖地エルサレムを救う使命を与えたのだと、熱弁をふるいます。


状況が飲み込めず、唖然としている子供たち。

彼らを説得するために、フルクは、神が定めた身分制度の話をします。

貴族階級は「戦う者」、聖職者は「祈る者」、そして農民と町人たちは「戦う者と祈る者のために働く者」なのだと。


領主と教会の両方から重税をかけられ、苦しい生活を強いられる沢山の人々。

勝ち気で正義感の強いアントンは、フルクの話を聞きながら、悔しそうな表情を浮かべています。


フルクは説得を続けます。

新しい十字軍のメンバーになり、エティエンヌと共にエルサレムを訪れることが出来れば、彼らは聖職者になれると。


フルク「お前たちは、エティエンヌを信じるか?」


不安を抱きながらも、生きる場所の無い子供たちは、フルクの言葉に一筋の希望を見いだします。


アンヌ「家には、帰りたくない!」

トマ「…生きられるかな?」

ピップ「エティエンヌがいれば大丈夫!」


その中で、エティエンヌは一人、無言で不安を抱えていました。


彼らはフルクに連れられて、遥か彼方のエルサレムを目指して旅立ちます。


ですがフルクには、エティエンヌの力を必要とする、重要な使命があったのです…。



まだ続きます。

読んで下さって、本当にありがとうございます。