舞台『しあわせの詩』の感想です。
上野聖太さんが桔平、内藤大希さんが健(たける)バージョンです。
沢山の間違いとネタバレ、激しい私見をお許し下さい。
前回の続きです。
キツネの楓(荻野恵里さん)は、『広い世界を見たい』という願いを叶えるために、森を出て行くことを迷っています。
そして楓は、最年長のキツネであるお婆(蔵重美恵さん)に尋ねます。
楓「お婆の願いは?」
お婆「‥昔、好きな人がおった」
楓「人?」
お婆「そう、人間。
ずいぶん昔のことだ。
たまに、こん森に狩りば来よった。
もちろん、私は姿を見せたりはしなかった。
あるとき、その人が不治の病になった。
『あん人ば助けてくれ』と、女がお参りに来た。
‥あんなに心が疼いたことは無かった。
この体の血の一滴まで、あげてもいいと思った。
でも、願いは叶わんかった‥」
お婆の話を聞いて、森を出る決心をする楓。
そして願いが叶う満月の夜、ためらう楓を桔平(上野聖太さん)は励まします。
桔平「怖かとやろ?」
楓「怖かさ!」
見つめ合い笑う桔平と楓。
楓「でも、私は満たされたか!
私、こん森を出る!」
桔平「おう!」
力強く、楓を励ます桔平。
楓「‥螢(ほたる・田宮華苗さん)をよろしく!」
泣きそうな声で、妹のような存在の螢を案じたあと、外の世界に飛び出して行く楓。
そして、心からの願いの叶った喜びの中で、楓は旅立って(死んで)行きました。
満たされた笑顔で消えて行った楓。
やがて、楓を送るように『キツネの黄泉(嫁)入り』の雨が降り出します。
雨の中で、楓に向けて『しあわせの詩』を歌う桔平とお婆。
そして桔平は、大切な人間の詩織との思い出を話します。
桔平「心が震えた。
詩織(千田阿紗子さん)が、子供が出来たって、言いに来たとき‥」
回想シーンになり、森の中で石に腰掛けている詩織と、詩織の足元に座っている桔平。
詩織「こん子が、笑ってくれたらいい。
他には何もいらん。
こん子が健康で、しあわせか人生ば送ってくれたら、それでよか」
満たされた表情で、お腹に手を置く詩織を、優しく見つめる桔平。
桔平は、詩織と婚約者との子供を、まるで身内のように大切に思います。
桔平「‥俺の心は震えた。
何でやろ、俺のほうが泣いとった」
お婆「それは、詩織の本当の願いだったからじゃろ」
この物語は、子供の幸せを願うことも、恋心も、自分のためだけの願いも、全てを等しく肯定していました。
そして詩織は、お腹に子供がいるときに崖から落ちて、一度命を失っていたのです。
詩織を助けるために掟を破り、自らの腕を切って不老不死のキツネの血を飲ませ、詩織を蘇生させた桔平。
そのために桔平は、もう永遠に満たされることは無く、一人生き続ける宿命を負っていたのです。
自分には、決して訪れない『満ちるとき』に向かう楓を見送るとき、桔平は『決して後悔しない』と自分に言い聞かせるような、とても強い目をしていました。
ですが、その桔平の行動は、詩織が若くして亡なったことと、詩織の息子の健(内藤大希さん)が、『痛みを感じない体』として生まれたことの原因でもあったのです‥。
まだ続きます。
読んで下さって、本当にありがとうございました。