《トリビアNo.110》東北人はゼリーが好き ―ゼリーと鯨- | いっきゅう会がゆく~宮城マスター検定1級合格者のブログ~

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 国の家計調査によると2021年から2023年におけるゼリーの支出額は1位が岩手県盛岡市で、4位秋田市、5位福島市、7位青森市、8位山形市、9位仙台市とベスト10の中に6県の県庁所在地がすべて入っています。過去データでも東北の都市が必ずいくつかランクインしています。東北人はゼリーが好きなんです。
 東北地方でゼリーと言えば「メン子ちゃんミニゼリー」。宮城県加美町の会社が製造販売するミニカップゼリーです。発売は1981年(昭和56)ですから、40年を超えるロングセラー商品です。小さい頃に食べたお菓子の味はなかなか忘れられないものです。この商品が東北地方のゼリー購入の下支えになっているのかもしれません。

  (メン子ちゃんミニゼリー)

 でもなぜ東北でゼリーなのでしょう?西日本と比較すると暑すぎない気候のためお中元にゼリーを選ぶ人が多いとの話もありますが、ゼラチンの製造会社が宮城県にあることも理由の一つでしょう。

 会社は「ゼライス株式会社」。家庭でゼリーを作る時に欠かせないパウダータイプゼラチンの商品名が社名の会社です。実はこの会社の前身を遡ると意外なことに石巻市の鮎川浜にたどり着きます。
 明治時代にはすでに捕鯨の基地であった鮎川浜では、当時ろうそくやせっけんの原料となる「鯨油」をしぼるために鯨が獲られていました。1901年(明治34)創業の稲井善八商店の稲井善八は、海に捨てられていた残りの部分を何かに利用できないかと考え、これを圧縮し肥料として流通させました。これが成功すると、当時鯨肉を食べる習慣のなかった東北で食用として生肉の販路開拓や缶詰加工などに取り組み、鯨を余すところなく利用することを目指しました。ただ、唯一鯨の頭だけは利用が難しかったそうです。
 そこで2代目の稲井善夫は大学や試験所を訪ね研究を重ねた結果、鯨の頭からゼラチンが抽出できることに着目、抽出する技術確立のため、1940年(昭和15)仙台市南小泉に「宮城化学研究所」を設置しました。翌年には鯨からゼラチンを製造する世界初の工場「宮城化学工業所」が稼働し、現在の会社に繋がっているのです。
 ゼリー製造の歴史に捕鯨あり。ゼリーを味わいながら石巻市鮎川浜にある「おしかホエールランド」に行って鯨について学んでみましょう。

  (おしかホエールランド)

  (ホエールランドの捕鯨船)

 

参考資料:稲井謙一著「ゼライスのキセキ」(2021)

 

(執筆:斗田浜 仁)