仙台市内に電気による初の灯りが点いたのは、明治27(1894)年、広瀬河畔の三居沢水力発電所からの送電でした。それには、多くの先駆者たちの努力がありました。その中で、宮城紡績(株)社長菅克復(かんこくふく)で「東北にも電気の明かりを」と資金難等を乗り越えて水力発電による点灯を成功させました。一方、技術面では、太田千之助が担当しました。太田は三居沢第1~第3号発電所、仙台電灯(株)の火力発電所等全ての発電所の立地や電気設備の据付けを担当、特に第3号発電所の上棟式棟札にも工事係として名前が記されております。
今回、ご案内の「冠川(かむりがわ)根白石発電所遺構」は、大正10(1921)年1月8日、太田千之助の設計・監督で完成し、電力量40kw(出力45kw)で根白石村、黒川郡宮床村総戸数443戸(1346灯)へ、他村に先駆けて電気を供給しました。大正13(1924)年、東北電灯(株)に合併し、電力供給不足等で昭和4(1929)年8月に廃止となりました。太田千之助は、日本の水力発電所の発祥地・国指定登録有形文化財「三居沢発電所」を建設するなど、東北地方の水力発電所25箇所、火力発電所2箇所、八木山吊橋の設計施工監督も担当しました。
現地は「冠川根白石発電所遺構保存会」で敷地を整備し、案内板3枚を掲示し、又一部は排水溝の復元を、堰堤に紅垂櫻を植栽して、散策が可能であります。
(執筆 吾妻 信夫)