【0〜2歳の保育】食事の時間になると泣いてしまうAちゃん(1歳児クラス) | 小金井市立けやき保育園 父母の会

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東京都小金井市にある認可保育園
「けやき保育園」に子どもを通わせる保護者の有志団体です。

こんにちは。前回まで、室内遊びの環境づくりについて見ていきました。今日からはそれに関連して、小金井市の公立保育園が乳児(0〜2歳児クラス)の保育で大切にしていることについて、具体的な事例を交えて紹介していきたいと思います。

 
●公立保育園が0〜2歳の保育で大切にしている6つのポイント
 
1. 一人ひとりの子どもを尊重し、大切にする。
例えば……人格の尊重、主体性を育てる、思いを読み取る、気持ちに寄り添う、自分でやりたい気持ちを育てる、日々の積み重ね、個人差に配慮する、一人ひとりに愛情を注ぐ、自尊感情を育てるなどを意識しているそうです。
 
2. 大人との信頼関係を築き、安心して過ごす。
担当制をとり、担当保育士との親密なかかわりを通じて人への信頼感情を育てています。大人との信頼関係が生まれることで、情緒が安定するだけでなく、周りや友達への関心も芽生えていきます。
 
3. 生活リズムを整え、安定して過ごす。
よく遊び、よく食べ、眠ること。心身の健康は、情緒の安定には欠かせません。
 
4. 遊びを通して心身の発達を促す。
遊び(自由な行為)を通して、子どもは育っていきます。「○○しなさい」と命じるのではなく、子ども自身がしたいことを見つけ、自由に遊ぶことが大切です。公立保育園では、「発達の要求に合った環境」と「最大限の遊びの時間」を設けることで、子どもの育ちをバックアップしています。
 
5. 清潔で安全、安らぎや温かみのある環境で過ごす。
感染症予防の面からも、保育室とおもちゃの消毒は欠かさず、安全点検もきちんと行っています。小さな集団を意識し、家庭的な環境を作っています。
 
6. 家庭との連携を密にする。
保育園は、単に「子どもを一時的に預かる」場所ではありません。「共に育てる」という意識を持ち、保護者との信頼関係づくりにも力を入れています。細やかな健康管理もそのポイント。気になることがあれば、すぐに保護者と情報共有するようにしているそうです。
 
●食事の時間になると泣きだしてしまうAちゃん(1歳児クラス)のエピソード
 
4月より入園してきた A ちゃんは、新しい環境に慣れるのに時間がかかり、日中泣いて過ごすことが多い子でした。少しずつ遊びの時間も泣かずに過ごせるようになってきたものの、食事の時間になるととたんに泣き出してしまい……食事が取れない日々が続きました。 
 
4月に入園してくる子どもたちは、新しい環境に不安を抱えていることが多いもの。保育士さんたちは、その不安な気持ちを受け止めつつ、保育園が楽しい場・安心できる場になるようにと努力しています。
 
食事が取れないAちゃんの様子を見た先生は、まず保護者におうちでの様子を確認しました。Aちゃんは実は食べることが大好きな子なんだそう。担任の先生方はその話を受け、どうやったらAちゃんが安心して楽しく食事ができるかを話し合い、いろいろな工夫をはじめました。
 
<なぜ、食事の時間になると泣いてしまうのか?>
担任の先生方は、手始めに「食事の時間になると泣いてしまう理由」を考えました。Aちゃんは大人の動き(出入りや入れ替わりなど)や扉の音に敏感。廊下を通る大人の姿が見えただけでも、親御さんを思い出して泣いていました。
そこで先生方はちょっとした工夫を取り入れてみました。
 
☆廊下を背にした席に移動
廊下を背にした席に移動すれば、大人の動きが少し分かりづらくなりますよね。
 
☆抱っこ食べ
泣いて食べられない時は、安心できるように背中をさすって、ひざの上に座らせて食べさせてみたそうです。
 
☆気分転換のため窓側に席を用意
食事コーナーに入るのも嫌がるAちゃん。そんなときは気分を変えて、窓側に机を用意しました。景色を見ながら食べれば少しは違うかな……?先生方の試行錯誤が伝わります。
 
☆1対1で食事をとる
Aちゃんのため、看護師さんも応援に入りました。1対1でかかわって、食事を取ってみてはどうだろうか、という取り組みです。すると、Aちゃんはいつもよりも食べてくれました!!
 
☆隣のグループに座る
1対1でかかわるだけでなく、隣のグループに座ってみたら、食べられたということもあったそうです。
 
<遊びの時間は泣かずに過ごせるようになってきた!>
やがて、Aちゃんは遊んでいるときは泣かずに過ごせるようになってきました。これはチャンス。先生方は、「遊びの流れのまま、スムーズに食事が取れるようにすること」を意識して、取り組みを進めました
 
☆好きなおもちゃと一緒に食事コーナーへ
Aちゃんが好きなおもちゃを食事コーナーに持ち込み、そのまま食事コーナーの椅子に座って遊びます。しばらくしたら、その席で食事をスタート!Aちゃんは泣かずに食べることができました。先生方は、その後も「遊びとのつながり」を意識しながら、食事に誘うように心がけたそうです。
 
 
おそらくAちゃんには、「食事の時間が不安」という気持ちがあったのでしょう。その不安が軽減されるようにと、日中の遊びの中でも「同じ大人」が意識的にかかわるようにして、楽しい時間を過ごしながら信頼関係を深めていきました。
 
このようなかかわりの中で、少しずつAちゃんの食事の時間への不安が軽減されていきました。食べられるようにはなってきたものの、早食いになってしまたり、嫌いなものになるとエプロンを外してしまったりするような姿もありましたが、先生方は「Aちゃんにとって食事の時間が楽しいものになるように」と食べられたことを認めていくようにしたそうです。
 
時間はかかりましたが、Aちゃんはだんだんと慣れてゆき、今ではすっかり食事の時間が大好きになりました。
 

・参考

第11回小金井市公立保育園運営協議会 会議録