先日武者小路実篤はいい人、と書いたので、その流れで。

1939(昭和14)年、円熟味の増した頃の作品。

 

婚約中の純愛カップル。ところが女が突然死んでしまうという悲劇。

韓流ドラマみたい。記憶喪失になったらドはまりだ。。。と独り言ちながら読んだ。

미안해. 나는 한국을 좋아한다.

①    最初の1/3:段々引かれ合う二人

②    真中の1/3:村岡の洋行と留守番する夏子の愛の手紙のやり取り

③    最後の1/3:夏子の死と村岡の死生観。

 

村岡君は堅物でオクテな真面目くん。

夏子は逆立ちが得意なアクティブな女学生。

意外とこういう二人がうまくいくものです。

 

洋行中の二人の手紙のやり取りは、読んでいる方が恥ずかしくなる様な、歯の浮くセリフのオンパレード。「あなたのおまえより」とか。幸せの絶頂期。②の紙面の半分以上がそれ。

 

閑話休題。

武者小路は戦時中、日本文学報国会/文学部会の会長。1942年設立された同会は、「国家の要請するところに従って、国策の周知徹底、宣伝普及に挺身し、以て国策の施行実践に協力する」ことを目的とした社団法人。

 

具体的には、言論・出版・文化の検閲・統制、マスコミ・文化人の組織化、国民のプロパガンダを行う。実行役として作家を任命している。武者小路以外には、徳田秋声、菊池寛、山本有三、高浜虚子、佐藤春夫、河上徹太郎など。

 

武者小路が戦争支持者になったのは、1936年の洋行中に受けた人種差別が原因だと言われる。それが②に書かれている。西洋に「媚びる必要はない、引け目は感じない」といった具合。

 

よほど酷いことをされたのね。訪問先はフランス、イタリア。

 

さて、③では、帰国の船中で夏子の死を知らされ、失意のまま帰国。死生観が述べられている。

●若い人間が死ぬのは残酷だが、それが事実だから、人間にはどうすることもできない

●生まれることが幸福か、わからない

●殺されたものが神になる。これは運命への復讐である。

 

う~ん、なんだか戦争を肯定しているように読めるのだが、どう解釈していいのかしら。。。

書評には純粋な恋愛小説とあるのだが、それだけじゃないですよね。

 

ここまで書いた後に安岡章太郎氏の解説を読むと、

文学を圧殺しようとする軍国主義の暴力に対して、作者が精一杯のレジスタンスを行った作品」とある。

 

resistしている??

益々わからなくなった。

(写真は表紙から引用)