1958(昭和33)年刊、同年芥川賞。

サントリー社員として、大ヒットしたCMコピーの生みの親であったことは有名な話。

 

これは教育の本である。これぞ大人の務めであり、子供の才能を伸ばし、将来を拡げてあげる、最善なお手本だと思う。小学校の先生、塾の先生、親御さん、子供と接する全ての大人に読んでいただきたい。

 

 

画塾を経営している「僕」が、会社経営で成功している父からネグレクトを受け、継母(後妻)から過干渉を受けて、魂が抜けた状態にある男の子の心を見事に開いてみせる物語。

 

川遊び、エビ釣り・・・と経験するにつれて、ついに男の子は心を開き、ついには傑作な絵まで描くようになる。それが「ちょんまげ・ふんどし殿様」。これには私も腹を抱えて笑ってしまった。

 

「裸の王様」の作者アンデルセンはデンマーク人であり、恐らく王様が統治するのはデンマークだろう。つまり、王冠だの、きらびやかな洋装であったことは間違いない。その感想画が、ちょんまげ殿様がふんどし姿で通りを歩いている姿。日本の子供がアンデルセンを完全に理解するとこうなる、と世界に知らしめたいくらいの傑作だ。

 

読書感想文のコンクールで、審査員である画家や教育評論家が、落選した「ちょんまげ・ふんどし殿様」を酷評する。大人たちの眼にあるのは、知的な寛容、軽蔑、教養ゆたかな微笑、のいずれか。

 

令和の今、読書感想文やら感想画のコンクールで優秀とされるのはどんな作品なのかしら?

 

と気になって、2024年版、某コンクールのHPを見た。

「読書の感動を絵画表現することにより、児童・生徒の読書力・表現力を養い・・・」。読書で感動することが前提なのね。う~ん、感動しなかったらどうするんだ???

 

読書で感動するには、日常生活での喜怒哀楽、他者との交流を通した感情のふれあいが日常的にあることが前提なのであって、そういう環境にしてあげることが大前提だと思う。

 

仕事や家事で忙しいときでも、子供の「あのね、」をちゃんと聴いてあげよう。

できなかったら、バアバ、ジイジを頼りにしよう。私はwelcomeだ。