マーケットには地元の客を始め、世界各地から観光客、それに多くはないが日本からのお客さんも来る。私の店には土産物となるような品物は置いていないから一般に観光客はやって来ない。ほとんどが地元のカスタマーである。

私の店の斜め向かいに香りに関するいろんなグッズを売っているショップがある。多種類の芳香石鹸、線香、花の香水、エキス類、小型蝋人形、雑貨類等、かなり多品目にわたって置いている。そこのオーナーのおばさんから、日本人観光客が彼女の店を訪れると、度々通訳としてお呼びがかかるのである。

以前ここで買ったが香水の名前を忘れてしまったので教えて欲しいとか、ユーカリの匂いでこの製品を探しているとか、珍しいのでは、蜂の分泌物、唾だけを採取したエキスを置いていないかとか、質問はいろいろである。

日本人は健康に関して実に知識が豊富で、どこからそんな情報を得るのか、驚く程もの知りである。一体蜂の唾エキスなんて何の特効薬となるのか? 蜂の唾などごく微量であろう、蜂蜜からその分泌物エキスだけを取り出す技術なんて本当に存在するのか? いろいろ疑問が尽きないが、そういった詳しいことを日本人客に質問すると非常に嫌な顔をされるのである。

それに彼らは英語を使って異国で買い物を楽しんでいるのである。地元日本人が通訳として、しゃしゃり出て行くことで第一にプライドが傷つく、喜んでくれるのでなく、迷惑そうな顔をし、適当にあしらった言葉使いをして、早くあっちへ行って欲しいとの見え見えの態度を取るのである。

私は通訳をやりたくて来たわけではない。隣の店のおばさんが頼むから来たのであって、何とも云えない変な雰囲気、やり切れない気持ちになることがある。昨今、世界の隅々にまで日本人が居住するようになった。それに伴い日本人による犯罪も増加、現地に住む日本人が日本人客をカモに詐欺行為をしているとも聞く。NHKの衛星放送テレビ、海外安全情報を観ていると、外国に住む日本人とか日本語を話す人物にはくれぐれも注意をするようにと報道されている。そんなこともあって在留日本人に対しては必要以上に警戒をしているのかも知れないが、心からの親切もしづらくなってきたのが現実である。

私のように地域に溶け込み一般社会の中でビジネスをしていると、日本人が店を持っているとは思わないらしく、日本人客だと分かって「いらっしゃいませ」などと話しかけると、びっくりした顔をする。異国情緒を味わいたくてショッピングに来た人ならば、日本人がこんな所までやって来て商売をしているのを見ると、幻滅を感じてしまうのだろう、嫌な顔付をされる方もある。そんな時、私はここで商売をしていることが、何か罪な事でもしているかのような気持ちになってくるのである。

そこで私は日本人に対しては中国人とか韓国人になりすまして応対をすることにした。顔つきもどちらかと言うとそちらに近いし、英語のイントネーションもそれらしくするのである。そうすると何もかも旨くいく事が分かった。

以前オーストラリアではビジネス永住ビザとかリタイヤービザとかの永住者が非常に多かった。10年前のピーク時にはこの狭いゴールドコーストに3000人以上、州都ブリスベンよりも日本人が多く住んでいた。海岸の美しさ、住宅環境や気候の良さに魅せられ、特にこの地を選んで移住してきた人が多かった。

ところが昨今、そのような方々が日本へ永久帰国するのが増えてきたのである。彼らからアンケートを取った訳ではないので真の原因は分からない。でも一般的な理由として、常に変わらない温暖な気候、それに日常生活が余りにも単純で変化がない。最初はそれに憧れて、ここに移住して来たのだが2、 3年もこの地に住めば退屈して来る。いくら釣りやゴルフが好きでも、それを毎日やっていれば飽きがくる。遊びの生活人生とはそう云うものである。

それかと言ってこちらの一般社会へはどうしても馴染んでいけないそれは言葉の壁の厚さと生活習慣の違いが大きすぎるからである。それで自然と日本人コミュニティが形成され、その中の一員となって活動してしまう。これではせっかく異国に住みながら、日本の生活の延長であると云わざるを得ない。

ここで日本人特有の性格を記すと、「不安定さと変化を好む、重複を嫌う、常に新しいものを追い求めるが、生活習慣は変えない」である。日本には完璧な四季があり、寒暖の差も激しく、季節毎にいろんな行事もある。しかも地震とか津波、台風に大水、突風とか竜巻、噴火山等、まさに天災大国日本、将来何が起きるか分からない少々ひやひやとした生活や人生、これらが日本人の性格には切っても切れない要素となっている。不安定要因とか常に変化を好み、それらを必要としているのであれば日本で住むのが一番である。