母は三毛猫をみるなり、『返してきなさい。』 といった。
こんなに可愛いのに・・・。信じられない言葉だった。
かなり食い下がってみたが、許しは得られなかった。
『お母さんが、だめだって・・・。』
『あらぁ、そう、だめだったの。』
ふわふわの可愛い仔猫は、私のものにはならなかった。
これをきっかけに、私は猫に執着した。
捨て猫に出会う度に、捨てた人間を恨んだ。
食べ物がなければ死んでしまう事が分からないのだろうかと。
学校帰り、草むらに仔猫2匹が入った箱を見つけた。
2匹・・・。1匹でも許してもらえないのに・・・。
私は給食の残った食パンを箱に入れて帰った。
その夜は激しい雨だった。
『あの猫・・・大丈夫かな・・。誰か拾ってくれたかな・・・。』
『もし、明日あそこにいたら、学校終わったら連れかえろう!』
そして翌朝、学校に行く前に猫がいるか
確かめに箱のある草むらを覗いてみた。
仔猫は死んでいた。
目を開けたまま、ずぶ濡れで死んでいた。
食パンはふやけていた。
連れて帰ればよかったと後悔した。
私は、ますます猫に執着していった。