山田太一さん
電通に内定した時、
大学の森川教授(元電通)が「お祝いに」と
サプライズゲストで山田太一さんを招いて、
ご飯をご馳走してくれた。
その時点で「ふぞろいの林檎たち」はPart3まで放送されていて、
すべてを集中して観ていたから、
目の前に山田太一がいる状況に、ただただ驚いた。
まだ何者でもない学生の
「中井貴一のお兄さん役(小林薫)は、なぜ変わったんですか?」
という好奇心だけの薄っぺらい質問にも、
ひとつひとつ、丁寧に、言葉を選ぶような口調で答えてくださった。
途中で森川先生から
「これから仕事をしていく上で、もっと役立つような他の質問をしろよ」と
嗜められた記憶がある。
社会人になり、十数年が経ち、
新入社員の頃から行きつけの店に小林薫さんが常連で来るようになった。
ある日、隣の席になったので、
その話をしたら懐かしがられて、盛り上がった。
役者に、自分の脚本のセリフを一言も変えさせないというのは、
信念のいることで、すごい熱量がさせることだとも思う。
テレビが面白かった時代をつくった一人であるのは間違いない。
心より、ご冥福をお祈りします。