【テーマ・しゃかい】
孤独について思っています。
悩ましい文字面に惑わされぬよう
辞書をひいたりもしてみますが
そこに示されたものが与えてくれるのは
その場しのぎの安心でしかありません。
孤独という言葉が
世間でどう説明されて
どう使われているのかを
既存の言葉で表して
わかったような気になれる
一時しのぎの納得です。
平易な言葉であらわすことで
幼い子どもを説き伏せるように
ごまかしているだけです。
わたしは真に孤独を知ることは
いまだ叶わないでいるわけです。
なぜなら
孤独だと感じるときというのは
同時に他者とのつながりを
真に感じているときでもあるからです。
自らの存在はそれだけで
他の存在を証明するものであり
他の存在を否定することはそのまま
自らの存在を矛盾に導くことです。
世界中でたったひとりになったような
つらい孤独感に苛まれているときでさえ
その気持ちは他者の存在なしには
生まれ得ない感覚であるわけです。
孤独だと叫ぶときこそ
ひとは他者の存在を最も強く信じている。
それはそのまま
辞書に載せられた既存の言葉が
真実でないことの証となるのに
身をもって知り得た事実よりも
暗黙の了解を得た常識の方を
わたしたちは
とりわけわたしは
愚かにも信じてしまうのです。
そうやってごまかしてしまうのです。
仮にSF小説や映画のように
人類が滅亡の危機に見舞われて
自分が最後のひとりとなったとしても
自分を存在せしめている
脈々と受け継がれた遺伝子は
最後の最後まで
孤独にはさせてくれません。
先祖あっての自分であり
その命が果てたとしても
血のつながりが絶たれることはない。
既に失われたいのちを思えば
もう誰もいないと思えば
それは孤独感には違いなくても
つながりある誰かとの記憶と
生き物としての遺伝子を抱えることは
それは孤独からもっとも離れたところに
一瞬でわたしを運んでいってしまうのです。
この矛盾に耐えながら
孤独たりえない事実をかみしめながら
孤独感の生ずるところを
こわがらずに見つめようとすれば
悩ましい文字面に惑わされ
既存の意味に躍らされて
らちのあかない自問自答を繰り返す
愚かな自分と対峙しなければなりません。
ひとは誰でも自分のなかに
何人もの自分を抱えていて
自分のなかの自分たちは
生物学的ルールに関係なく
無限に増殖してゆきます。
遺伝子的なつながりもなく
進化の歴史上の接点もなく
となりに住むおじさんよりも
はるかに赤の他人とも言える。
そんな自分との闘いや
そんな自分との折衝は
他のどんなことよりも
実際は孤独に近いと言える気がします。
日頃わたしはその気持ちを
既存の孤独という説明に置き換えて
本来ならば孤独など決して生じ得ない
他者とのつながりのなかに
孤独感の原因をでっちあげているわけです。
その方が存在の矛盾に耐えるよりも
よほど容易くらくだからです。
そしてらちのあかない
自問自答を繰り返し
対峙したはずの自分に同情し
なれあいや甘えをもって
自分同士の仲を危うく取り持ちながら
罪のない他者を責めたり排除したりすることで
ほんとうの孤独に近づいてゆく。
自分のなかに生じた
当たり前の孤独をないがしろにして
ごまかしの説明にたましいを売って
自分では手の施しようのないところに
あらたな孤独を作り上げて
それに苦しみ嘆きもがく
究極の自作自演で
人生を台無しにしたくはない。
自分と向き合うときが
もっとも孤独だと思います。
しかしそれは
同時に孤独ではないことの
証明にもなり得ます。
ましてわたしは孤独を知ることは
いまだ叶わないでいるわけです。
眠れずに更けた夜でしたけれど
これで眠りにつけそうです。
孤独について思っています。
悩ましい文字面に惑わされぬよう
辞書をひいたりもしてみますが
そこに示されたものが与えてくれるのは
その場しのぎの安心でしかありません。
孤独という言葉が
世間でどう説明されて
どう使われているのかを
既存の言葉で表して
わかったような気になれる
一時しのぎの納得です。
平易な言葉であらわすことで
幼い子どもを説き伏せるように
ごまかしているだけです。
わたしは真に孤独を知ることは
いまだ叶わないでいるわけです。
なぜなら
孤独だと感じるときというのは
同時に他者とのつながりを
真に感じているときでもあるからです。
自らの存在はそれだけで
他の存在を証明するものであり
他の存在を否定することはそのまま
自らの存在を矛盾に導くことです。
世界中でたったひとりになったような
つらい孤独感に苛まれているときでさえ
その気持ちは他者の存在なしには
生まれ得ない感覚であるわけです。
孤独だと叫ぶときこそ
ひとは他者の存在を最も強く信じている。
それはそのまま
辞書に載せられた既存の言葉が
真実でないことの証となるのに
身をもって知り得た事実よりも
暗黙の了解を得た常識の方を
わたしたちは
とりわけわたしは
愚かにも信じてしまうのです。
そうやってごまかしてしまうのです。
仮にSF小説や映画のように
人類が滅亡の危機に見舞われて
自分が最後のひとりとなったとしても
自分を存在せしめている
脈々と受け継がれた遺伝子は
最後の最後まで
孤独にはさせてくれません。
先祖あっての自分であり
その命が果てたとしても
血のつながりが絶たれることはない。
既に失われたいのちを思えば
もう誰もいないと思えば
それは孤独感には違いなくても
つながりある誰かとの記憶と
生き物としての遺伝子を抱えることは
それは孤独からもっとも離れたところに
一瞬でわたしを運んでいってしまうのです。
この矛盾に耐えながら
孤独たりえない事実をかみしめながら
孤独感の生ずるところを
こわがらずに見つめようとすれば
悩ましい文字面に惑わされ
既存の意味に躍らされて
らちのあかない自問自答を繰り返す
愚かな自分と対峙しなければなりません。
ひとは誰でも自分のなかに
何人もの自分を抱えていて
自分のなかの自分たちは
生物学的ルールに関係なく
無限に増殖してゆきます。
遺伝子的なつながりもなく
進化の歴史上の接点もなく
となりに住むおじさんよりも
はるかに赤の他人とも言える。
そんな自分との闘いや
そんな自分との折衝は
他のどんなことよりも
実際は孤独に近いと言える気がします。
日頃わたしはその気持ちを
既存の孤独という説明に置き換えて
本来ならば孤独など決して生じ得ない
他者とのつながりのなかに
孤独感の原因をでっちあげているわけです。
その方が存在の矛盾に耐えるよりも
よほど容易くらくだからです。
そしてらちのあかない
自問自答を繰り返し
対峙したはずの自分に同情し
なれあいや甘えをもって
自分同士の仲を危うく取り持ちながら
罪のない他者を責めたり排除したりすることで
ほんとうの孤独に近づいてゆく。
自分のなかに生じた
当たり前の孤独をないがしろにして
ごまかしの説明にたましいを売って
自分では手の施しようのないところに
あらたな孤独を作り上げて
それに苦しみ嘆きもがく
究極の自作自演で
人生を台無しにしたくはない。
自分と向き合うときが
もっとも孤独だと思います。
しかしそれは
同時に孤独ではないことの
証明にもなり得ます。
ましてわたしは孤独を知ることは
いまだ叶わないでいるわけです。
眠れずに更けた夜でしたけれど
これで眠りにつけそうです。
【テーマ・こくご】
あのひとはとても恐いひとだと
ずっとおもっていたんだ。
どんな顔をしていたのかって
思い出そうったって
怖くて顔なんか覗けやしない。
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ。
そんな顔だったに違いない。
あのひとはとても気弱なひとだと
ずっとおもっていたんだ。
どんな顔をしていたのかって
思い出そうったって
気の毒で顔なんか覗けやしない。
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ。
そんな顔だったに違いない。
ある日あのひとは
声を荒げて怒鳴っていたから
どんなにか目が血走って
どんなにか恐ろしい形相で
こちらを睨んでいるかと思いきや
はじめて覗いたあのひとは
のっぺらぼうだったんだ。
ある日あのひとは
震えながら怖じけていたから
どんなにか目が涙で滲んで
とんなにか悲しい表情で
うつむいているかと思いきや
はじめて覗いたあのひとは
のっぺらぼうだったんだ。
のっぺらぼうの
怒っているやら
泣いているやら
のっぺらぼうの
生きているやら
死んでいるやら
恐いひとだとおもっていた
あのひとはどこへいったやら
気弱なひとだとおもっていた
あのひとはどこへいったやら
のっぺらぼうだけ置き去りにして
あのひとはどこへいったやら。
どんなに思い出そうったって
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ
そんなことしか知らないんだ。
あのひとはとても恐いひとだと
ずっとおもっていたんだ。
どんな顔をしていたのかって
思い出そうったって
怖くて顔なんか覗けやしない。
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ。
そんな顔だったに違いない。
あのひとはとても気弱なひとだと
ずっとおもっていたんだ。
どんな顔をしていたのかって
思い出そうったって
気の毒で顔なんか覗けやしない。
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ。
そんな顔だったに違いない。
ある日あのひとは
声を荒げて怒鳴っていたから
どんなにか目が血走って
どんなにか恐ろしい形相で
こちらを睨んでいるかと思いきや
はじめて覗いたあのひとは
のっぺらぼうだったんだ。
ある日あのひとは
震えながら怖じけていたから
どんなにか目が涙で滲んで
とんなにか悲しい表情で
うつむいているかと思いきや
はじめて覗いたあのひとは
のっぺらぼうだったんだ。
のっぺらぼうの
怒っているやら
泣いているやら
のっぺらぼうの
生きているやら
死んでいるやら
恐いひとだとおもっていた
あのひとはどこへいったやら
気弱なひとだとおもっていた
あのひとはどこへいったやら
のっぺらぼうだけ置き去りにして
あのひとはどこへいったやら。
どんなに思い出そうったって
目がふたつに
鼻と口がひとつずつ
そんなことしか知らないんだ。