【テーマ・りか】


アパートの管理会社による
二度目の除草剤散布がありました。

対象となっている雑草は
すでに枯れ果てていたのに

これ以上なにを枯らそうというのか。


息子とわたしのあさがおは
数枚の黄色い葉っぱを残して
あとは種子の入ったまるだけに
なりました。



オー・ヘンリーの
最後の一葉を思います。

ひとひら葉が落ちるたびに
来るべき最期のときを思います。

今年の観察日記を書き終えたら
ひとつの区切りをつけようと
もう決めていたせいか

急になにもかもが
惜しくて惜しくてしかたありません。



階下の絵描きがいのちを懸けて
描いた最後の一葉のことを
ここのところずっと考えています。

あの絵描きはそこかしこに
どこにでも存在して
ここぞというときには

わたしにとっての
最後の一葉を描いてくれるに
ちがいない。

みずからのいのちと引きかえに
わたしを生かしてくれるに
ちがいない。

彼に値するわたしでいよう。
いのちに値する生き方をしよう。


言葉にすると陳腐ですが
除草剤を撒かれた野に
凛として生ききるあさがおに

こんなにも救われています。














【テーマ・こくご】



そんなふうに怒らないで。

そう話しかけたらあなたは
目を丸くして驚いていた。

あなたはあなたのなかの
激しい怒りに気づかない。


思うようにならない
あらゆることへの苛立ちと憤り。

思うようにならない
あらゆることへの焦りと不安。

あなたは怒っているのに
そのことに気づかない。


時の流れがあなたを老けさせること
命あるものがいつか死んでゆくこと

こころが目に見えないものであること
こころが手に取れないものであること

眠れないあなたを朝が待ってはくれないこと
新月の闇夜があなたを照らしてくれないこと

あなたがあなたに優しくないこと
あなたがあなたを傷つけてること

あなたはそれをみんな知っていて

あなたのなかに
あなたに怒るあなたがいるのに

あなたはその怒りだけを

知らないふりして
そのことに気づかない。



そんなふうに怒らないで。

怒るあなたと同じあなたが
いつかあなたを許す時まで

ここで見つめていますから。