【テーマ・こくご】


もしも言葉というものが
無粋で不便で有害なものならば
わたしたちはどうして
いつまでも言葉にすがって
生きるのでしょう


言葉はときに
無限であるべき広がりを限定し

言葉はときに
伝わるはずの想いをねじ曲げ

言葉はときに
真に見つめるべきものから
目をそらす道具に成り下がり

そしてわたしたちを
苦しめます


言葉にできない
もどかしさ
苦しみや憎しみ
悲しみや絶望感

伝える術であるはずの
言語が使えない焦燥と苛立ち

表現の術であるはずの
言語が与える誇張と思い込み

言葉はときに
あまりにも有害で
あまりにも罪深い


だからこそ

ひとは最も苦しいときに
言葉を失い

ひとは最も幸せなときに
言葉を失う


わたしたちが
苦しみを言葉にできないと
もがくことは

わたしたちが
幸福を言葉にできないことと

理屈は同じなのだと思う



もしもいま

言葉にできない苦しみを
抱えているならば

それは苦しみを抱えた同じこころが
本当の感動や幸福を
言葉の限界を超えて
感じようとしている
証なのかもしれません


わたしたちのこころは
言葉でできているわけではない

誰だって
動植物や赤ん坊や自然現象と
こころが通じた覚えがあるでしょう?

言葉のいらない
世界を感じた覚えがあるでしょう?


母国語で挨拶しながら
産道を通る赤子がいますか?



言葉にできないもの

それは苦しみや憎しみや
苛立ちだけではなく

むしろ喜びや
感動や幸福であるということ

作用反作用の法則は
言葉の世界にもあるということ

わたしはこれから
そこのところを肝に銘じて

綴ってゆきたい
と思いました


【テーマ・どうとく】


今日は廃品回収の業者さんに
来てもらう依頼をしていた日でした

数日前に
意を決して
電話しました

この5年
いや
ものによっては
それ以上の月日

手離すべきものを
所持し続けてきました


ものを処分して
スッキリサッパリ
なんて

うそです


本当は
今まであったものが
なくなるということは

それが要か不要かに関わらず

胸に風穴があくものです


関わったものと
離れるということは
そういうことだと
思います

それを
ゴミ同然に
捨ててせいせいしただとか
きれいになって気持ちよいとか

ごまかしてはなりません



だいたい
ゴミと決めたのは
自分自身の身勝手です


捨てたくて
離れたくて

ゴミだと言って
言い聞かせるのです



わたしには
しばらくこの作業が続きます

片付けと言えば
気が楽ですが
これは
わたしにとっては

道徳の問題です
【テーマ・こくご】



山道なのか河原なのか
それはわからない
砂利の広がる景色にいて
足元を騒がす石ころに
思わずこころを奪われる


忙しいのかヒマなのか
それはわからない
ついつい小石を手にとって
ひとつひとつ積んでみる

無邪気な子どもがやってきて
積んだ小石を蹴散らかす
仕方のないこと

ふらりと犬がやってきて
積んだ小石に小便かける
仕方のないこと

突然強い風が吹いてきて
積んだ小石をなぎ倒す
仕方のないこと


朝なのか夜なのか
もうわからない
ただ小石の望むままに
天まで届けと積み上げる


積んでは崩れて
崩れては積んで

空しいことだと誰かは言うが

一度小石を手にしたならば
積まずにおくほうが空しいのだと

そんな気持ちに包まれて

積んでは崩れて
崩れては積んで


積んでいるのか
崩しているのか
時々わからない

けれども
見たことのない石が混じるとき

ああ、こいつも
天に届きたいのか

そんなことを思って

崩れると知っていても
積み上げ続けていく

ただ一心不乱に積み上げる