【テーマ・こくご】


旅の途中
ばったり出くわした

蛇のようなからだに
龍のような頭が乗っている

そいつは言う
ゆく道を遮って



わが瞳は困難を助く宝玉である

右の玉は感情の玉
七色の輝きを放ち
あまたのひとの心を惹き
そなたを美しく彩るだろう
ひとたび願えば世の中の
苦しみを覆い隠す光を放つ
みなその光を求めて
そなたのもとに集うだろう

左の玉は理性の玉
深い藍色の宇宙を宿し
決して光輝くことはないだろう
多くのひとはそれを避け
そなたから離れてゆくが
大いなる宇宙はそなたを
未来永劫護ってゆくだろう


いまそなたに
どちらか片方の玉をやろう

右の玉を取るならば
われは精彩を失って
そなたの瞳には映るまい
わが蛇の如し胴体を
手探りで越えてゆくがよい

左の玉をとるならば
われは言葉を失って
そなたの耳には届くまい
われは知性を失って
そなたを喰らうであろう




ばったり出くわした
奇妙なすがたの生き物
言うことも奇妙である

両目ならすっかり
自分のを持っている

なんてあわれな生き物
失うことを恐れるあまり
与えることでごまかしている

おまえの欲しいのは
旅人の絶望と堕落

おまえの瞳を繰り出せば
どちらの玉も石と変わらぬ

それはおまえの瞳であって
誰の宝でもないからだ


さあ
道をあけたまえ!



【テーマ・しゃかい】


いつからだろう
写真を撮るって行為が
こんなに身近になったのは


写メだとか
デジカメだとか
シャッターを切ったら
すぐに画像が見られて
気に入らなければ
何度でも撮り直せて

たくさん撮っても
ちっさいメディアに
がっつり保存できて

削除もコピーも
クリック一発

便利な世の中になりました


そんな時代が到来する前
写真は今よりじれったいものでした

記念に写真を一枚
シャッターを切ってから
やきあがった写真を見るまでに
今よりずっと時間がかかった

どんな風に撮れているか
しばらくの間わからない
やきあがってのお楽しみ

焼き増しするにも
ネガの世界をよく調べ
さらに時間をかけて
焼き増した

アルバムはいつのまにか
やたらと分厚く膨れ上がり
処分するには破き捨てるしかなく

厄介なシロモノだった



焼きつけてから表れるまで
少し時間がかかるところが
ひとの記憶に似ている


やたらに撮って
たやすく消去し
らくらく複写し
自在に修正可能

それもどこか
ひとの記憶に似ている



一枚の写真がやかれるまで
一つの記憶が刻まれるまで

あれこれ思いを馳せながら
時を待つのが当たり前だった
あの頃にかえって考えたい


写真、撮られるの
きらいだったんだけどね


【テーマ・どうとく】


間違ったことを
している気がして
とても苦しく
思っています

ただでさえ
ものを捨てるのに
抵抗があるのに

震災後は
被災地の様子が
ちらついて

不要品という言葉さえ
たいへんな罪に感じます


それでも
手離すべきものは
手離していきます

胸がつぶれる思いです

わたしに余裕があれば
処分のしかたも
リサイクルやフリマなど
適切に選択できるのでしょうが

それができない
今の自分を
蔑み責めながら
捨てています



必死なのです