【テーマ・かていか】


きちんと

を辞書でしらべると

①よく整っていて、乱れたところのないさま
②正確な、また規則正しいさま
③すきまや過不足のないさま、ぴったり

(大辞泉)

とありました



思えば自然界ほど
きちんとしたものはありません

自然界を辞書でしらべると

①人間を含む天地万物の存在する範囲
②人間以外の、天体や動植物など人間をとりまく自然の世界
③人間と生物を除く、物理的な世界

(大辞泉)

と、こうきますので
混乱するのですが

わたしの妄想する自然界とは
①と②のあいだくらい
あえて言うなら

人間の精神を除くすべてが存在する範囲

というイメージです


この世で
きちんとしていないのは
人間の精神くらいなもので
ものごとはあきれるほどに
きちんとしていると思うのです


どんなに苦しい夜にも
必ず朝が来るように
時間の流れは嫌になるほど
きちんとしています

ほとんどの物質は
きちんとした原子の並びで
整然と組成されているようです


この世のことわりは
本当にきちんとしていて
きちんとしているから
自然であるわけです


それなのに
わたしたちは
きちんとするということを
努力してわざわざ手を加えて
やっと達成できることであるかのように
目標として位置づけます

きちんと着なさい
きちんと守りなさい
きちんと払いなさい
きちんと考えなさい
きちんと食べなさい

放っておくと
どんどんきちんとしなくなるから
頑張って
きちんとしなきゃならない

不思議ですね

まるで自分たちは
自然の摂理に反して
存在しているような
とても矛盾した
居心地の悪さを感じます


努力を惜しまず
精進しなければ
きちんとした
自然の摂理にかなった
存在になることは
できないのです



時間の規則的な流れ
物質を組成する原子
親から子へ継がれる遺伝

きちんとしたものに
囲まれているのに

きちんとできない
圧倒的な劣等感



今日は台所をきちんとしよう
なんて何気なく思ったことが

またもや動作を阻害する妄想に
発展してしまいました


さあ

掃除、掃除
きちんとしないとね
【テーマ・どうとく】


断捨離という言葉が流行り始めたころ
理由はわからないけれど
なにか気持ちがそわそわするような
落ち着かない気持ちになりました

もうずいぶん前のことです

コンビニで何気に手にした雑誌の
特集を立ち読みしたりしましたが
なにかこころに響くものを感じながらも
実際には読んで終わるだけで
いかなる行動にも結び付かない
そういう状態が続きました

もともとひねくれ者のわたしは
大勢がよってたかる流行りものには
意地でも手を出したくない性質で
興味をそそられている自分を
ただ否定したいがためだけに
敢えてそっぽを向いたのでした

気になっていたくせにね



雑誌やそのほかのメディアから
わずかに入ってくる情報をもとに
そこから勝手に派生する
わたし独自のイメージで
捨の生活を意識したのが
7ヶ月くらい前でした

所有している
(と思い込んでいる)
モノを精査することは
自分自身の過去や未来を
精査することにつながると感じ
一筋縄ではいかないと思い
捨てる片付けは
わたしのなかで
単なる整理整頓を超える
非常に道徳的な意味合いを
もつようになりました

身を切るような痛み
胸が張り裂ける思い

それらを掌握したうえで
あきらめず捨て続けることは
なんらかの筋がなければ
できないことだと
痛感していたのです

軽いノリの断捨離特集などでは
体験者が語る
「断捨離で身も心もスッキリ」的な
ポジティブ一辺倒のアウトラインばかりが
照らし出されている気がして

実際に引き算生活をしてみたときの
自分が丸裸にされるような
自己完結的な叱責と羞恥を
繰り返さねばならない切なさを

あるはずなのに書かない誌面に
嫌悪すら覚えました


けれども
嫌悪あるところには
関心があるというもので

自分のなかの
葛藤をくぐり抜け
ようやく
断捨離を書いた
やましたひでこさんの
書籍に手が伸びました


本や誰かの意見に
啓発されて何かを行う
そういう自分が
いやだったことに気づきました

それはつまり
自分がめちゃくちゃに
他人の意見に影響を受けやすい
体質だということを
知っていたことの
裏がえしなのだとも思いました

古本屋で半額で手に入れて
一気に読みました

やましたひでこさんが
断捨離を新しい片付け法とした
ベースには
ヨガの行法哲学があるのは
知っていましたが

深層心理や無意識
見える世界と見えない世界
もっと見えない世界
集合的無意識

色即是空

ひねくれ者のわたしが
意地でも口にしたくない
気になってしかたない
言葉や概念みたいなものが

これでもかと
書き連ねてありました


もし数年前
流行りに乗って
自分の生活を見直すより先に

もっと言うと
自分のこころの迷いを自覚するより先に

この本や
断捨離という言葉に触れても

わたしには
なにも起こらなかったと
思います


身を切るような痛み
胸が張り裂ける思い

そうか
そうだったのか

という気持ちから

そうか
それでよかったんだ

という気持ちへ


自分の閉鎖的な感覚と
世間の開放的な感覚が
符合する快感


そういうのを
強烈に感じました




だからといって
捨てる生活から
迷いが消えるわけではなく

むしろ
迷いがあることが確定するのですが

その迷いは
自力で行動して
迷いきるしかない



体調不良で
滞っていた
捨という道徳の勉強を

本腰いれて
やってみようと

決心させてくれる
出来事でした
【テーマ・こくご】


おまえがほんの
豆粒くらいのころ
知っていたよ
おまえがわたしの
背中に喰いついたことを

そんなふうに
生まれついたのは
おまえのせいじゃ
ないのだけれど

知っていたよ
おまえはひとの
生き血を吸って
生きる道しか
知らないことを

おまえがちょうど
こぶしくらいになったころ
わたしはおまえに
手が届いたろうけれど

知っていたよ
おまえがわたしの
背から落ちれば
おまえのいのちの
落ちることを

おまえはきっと
怯えたろうね
いつかは失ういのちでも
わたしの手がおまえを払い
次の瞬間おまえが
地面に叩かれることを

おまえの腹も
おまえの心も
すっかりわたしの
生き血に満ち満ちたころ

知ったのだろうね
いつかはわたしも
死ぬのだということを

わたしが死んで
血が死ねば
おまえは生き血を失って

おまえも死ぬのだということを


わたしの血を残らず吸えば
おまえはすっかり
わたしのようだ

だがおまえは知っている
おまえは生き血を喰らう生き物で
決してわたしではないことを

背中におぶった赤子のように
おまえが大きく膨れるころ

知っているよ
おまえがわたしを
殺したような
罪悪感に苦しむことを

そんなふうに
生まれついたのは
おまえのせいじゃ
ないのだけれど

知っていたよ
おまえがいつも
泣きながら
わたしの背中に
しがみついていたことを

知っていたよ
わたしのからだから
全部の血がなくなって
おまえがひとり
生き残るのは

おまえにとって
死ぬほどつらい

だからわたしは
もう少し
おまえを背負って
生き延びよう

おまえがいつか
おまえ自身を
支えきれず
離れて落ちる
その日まで

おまえがいつか
満腹に気がついて
生き血を飲むのを
やめる日まで

おまえがほんの
豆粒くらいのころ
生き血を吸わせた
わたしの務めを

きっとわたしも
知っていたよ