【テーマ・ほけんたいいく】


学校帰りの通学路。

少しずつ夜の帳が下りるなか
ザシュ、ザシュ、
運動靴とアスファルトが擦れ合う音を
まさか自分が出しているなんて
露ほども思わないまま

ザシュ、ザシュ、
ぼんやり空を眺めたりしながら
トボトボと家路につく。

誰にでもある思い出の一頁なのでは。


いまでは
カツンコツンと甲高くなる
ハイヒールになっているかも
しれないけれど

大人になっても
二足歩行の人間は
同じことをしているわけです。



わたしは特に
もやもやと思い悩む何かを
こころに抱えてしまったとき

ザシュ、ザシュ、
または
カツン、コツン、

その規則的な響きに
なんとなく耳を傾けながら

太陽の沈んだ後の空を
ぼんやりと眺めながら

家路につきます。

なんとなく聴覚を泳がせて
ほんやりと視覚をぼかしていると

不思議と悩み事は
いよいよ逆に輪郭を露わにします。

外の音を聞くのをサボって
外の物を見るのをサボると

内側のものの方が
はっきりしてくるのです。


もやもやとして気持ち悪かったものは
いや必要あってもやもやとした
曖昧な形をしてくれていたのだ。

ということに
気づいたときにはもう遅い。

怪物のような姿に変化した
そのもやもやの正体は

自分への失望
他人への羨望

悔しさや憤り
悲しみや嘆き

まっこうから向き合うのが
怖くて難しくてツラいから

自他の境でもやもやと
その姿を誤魔化していたんです。



なんとかしてくれ!
と空に向かって投げつける。

でも空はどうともならない。

なんとか言ってくれ!
と空に向かって悪態をつく。

でも空はどうともならない。

わたしの抱えた問題は
暮れゆく空に吸われるばかりで

わたしが空っぽになっていくのに
てんで空はどうともならない。


あきらめてうなだれて
ふと我に返るとまた

ザシュ、ザシュ、
カツン、コツン、
規則正しい音が聞こえてくる。

空がわたしを貪っている間も
わたしはきちんと歩いていたのだ。


気がつくと辺りは真っ暗
歩みを止めて振り返ると

星が出ていた。


怪物が星になったなんて
まさかそんな感傷的なこと
言ったり書いたりできないけど

確かに怪物はいまはもう姿を消していて

代わりにわたしは
いま家に帰る途中だったことに

改めて気づいたりして
また
ザシュ、ザシュ、
カツン、コツン、

規則正しく音を立てるのでした。



この1頁

きっと誰しも持っている
思い出の焼き直しなんでしょうね。

わたしはわたしの
わたしだけの人生を歩みながら
同時にほかの誰かの同じ人生を
辿っているのかもしれません。



自分への失望?
他人への羨望?

自他の境に棲みついた怪物が
お空の星に変わったのなら


そんなもの
もう存在しやしないでしょう。


あるのはただ

たとえ我を忘れても止まることのない
規則正しい歩みだけなのでしょう。






【テーマ・こくご】


ぼくはこの部屋にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみのいるこの街に
ぼくはきっといるからね


ぼくはこの街にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみのいるこの国に
ぼくはきっといるからね


ぼくはこの国にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみのいるこの地上に
ぼくはきっといるからね


ぼくはこの地上にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみのいるこの宇宙に
ぼくはきっといるからね


ぼくはこの宇宙にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみのいるこの世界に
ぼくはきっといるからね


ぼくはこの世界にはいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみがそこにいるかぎり
ぼくはそばにいるからね


どこって探さなくてもだいじょうぶ
いるって知らなくてもだいじょうぶ


ぼくはどこにもいないけど
きみはきっとだいじょうぶ
きみが生きているかぎり
ぼくも生きているからね