続きのない物語 13 | 晴れときどき雨

晴れときどき雨

晴れが続けば雨が降る
だけど、またいつか晴れるさ












「重てぇよー」



「お前の方が少ないだろー」



俺がうだうだと言う文句に、



裕介はそう言って一蹴した。



…確かにそうだけど…ほんとに少ししか変わらない



「山本せんせー」



片方の手でノートを落とさないように持って



裕介は職員室のドアを開ける。



「お、来たか」



ゆったりいすに座っていた先生は腰を上げて



すでに持ってきてあるほかのクラスのノートの横に置かせた。



「お疲れさん」



先生はにっこりとそう言った。



「あ、おい、太田」



俺らが職員室の出口に向かう途中、



裕介を見つけた担任が声をかける。



「はい」



優等生みたいな良い返事で



裕介は担任のところに行った。



俺は職員室にいるのは居心地が悪いので



職員室を出た廊下の壁に背をつけて待つ。



「あ…」



小さな、女の子の声が聞こえる。



俺は特に意味もなくその声の方を見た。



「あ」



そこに立っていたのは



一冊のノートを両手で抱いた、浅村ゆりな。



「なにしてるの?」



少しだけ首をかしげる姿がかわいい。



裕介、と言おうとして俺は口を閉じた。



この子は裕介を知らない、ってことにするんだから…



自分に言い聞かせて、もう一度口を開く。



「友達、待ってる」



職員室の窓から見える裕介の姿を指さす。



先生と向き合ってるところを見ると



進路のことでも話してるのか。



「浅村さんは?あっち、行くの?」



なんのノートかはわからないが



なんとなく、職員室に用があるというわけではなさそうで



俺はそう尋ねた。



「あ、あたしは…」



今まで普通に目を合わせていた彼女が



急に顔を赤らめて、床に視線を落とす。



…どうしたんだ?



「あたしは…」



もう一度そう言って、上目づかいに俺を見る。



「そこを通ったら神田くんが見えたから…来ました」



そこ、と言って指さすのは2年生の階の廊下。



確かに、ここに立ってたらあそこから見えるけど



………、、、



心臓がドキドキ言ってるのが聞こえてくる。



…むろん、自分の。



「…なにか、用でもあった?」



まさかそんな無意味に俺に話しかけるなんて



そんなことがありっこない。



俺は裕介曰くモテるらしいが、



実際そんなに女子から話しかけられる、みたいな



そんな裕介みたいなエピソードはない。



「あ、いえ…っ、用は…ないんです」



浅村さんは持っていたノートで顔を隠した。



恥ずかしそうに。



…あれ、これは…



俺は自分の中でなにかが高ぶっているのがわかった。



「え、なに達哉…」



ぴったりとタイミングを合わせたみたいに



職員室から出てきた裕介が



俺と浅村さんの顔を交互に見る。



「…ごめん、邪魔した!」



雰囲気をぶちこわした上、さらに壊す。



走り去ろうとした裕介を止めたのは



「待って、太田…くん」



浅村さんの方だった。



「ちょっと、いいかな?」



そう言って、裕介の制服の裾を持つ。



「太田くん、少し借りてもいいかな?」



俺にも了承を求められたので、ゆっくりと頷く。



すると彼女は可愛い微笑みを見せて、



職員室から見えない場所に二人で行ってしまった。