向こうでの
5度目の誕生日を迎えた父



定年退職後
鮎釣りにハマった父だった
病いが発覚する前の夏まで



結婚してから
本州西の端っこで
暮らしている私

海の魚が
豊富だからなのでしょう

こっちに来て
実家の夏の食卓に並んでた
「ハモ」や「鮎」を
あまり見かけない



父が鮎釣りにハマってた頃の夏は
実家へ帰ると
七輪で塩焼きしてくれた鮎を
たくさん食べさせてくれた


小さい頃には
お箸の先に触れるのさえ
嫌だったお腹も

鮎ってこんなに
美味しかったっけ?
そう思うくらい
とてもとても
美味しかった


何よりも


父の笑顔が
嬉しかった



こちらに戻る時には
焼いて甘辛く味つけして
たくさん持たせてくれた



そんな想い出のある「鮎」



先日、珍しく
こちらのスーパーで
見かけた



昔食べた鮎の味が
どんなだったか
記憶は薄れてくけれど


父の笑顔
父の声
父の温もりは


どんなに月日が流れても
正確に想い出され

もう遠い遠いはずなのに
すぐ側に感じれる



鮎を食べたいと
ちっとも思わない

もう
食べなくていいや




私があの頃
食べていたのは

父の

愛情だったのだから