(日経 2024/1/22 高野龍昭 東洋大学教授)

 

介護制度については、保険料を徴収されていることもあり、多少の関心はありましたが、人が集まらない、賃金が安い、等の断片的な情報ばかりで、小職自身体系的に数字として把握していませんでした。「公費投入して賃金、生産性を上げるしかないのでは?」と漠然と考えていましたが、中々簡単ではないことを今回の記事で知りました。何事も数字で押さえるというのは大切ですね。

 

以下、論旨ポイントです。色々考えさせられました。

  • 介護保険制度の持続可能性のためには、介護人財の確保が主要課題。
  • 職員数は、00年の55万人から21年には215万人へ3倍増!! しかし、今後も需要が増加するため、40年には280万人が職員して必要となる。人財の不足に対しては、外国人介護人財への期待も大きいが、外国人が日本に定着することを前提とした制度の組み換えを考えないと、大幅増は期待できない。
  • 介護現場からは、人財確保のために全産業平均と同等の給与水準が必要だとの声が聞かれるが、介護職員平均と全産業平均の年収差は約115万円あり、仮にその差を公的財源で補填すると年額約2.5兆円、消費税1%分を超える水準となり、早期実現は困難。そもそも、医療・福祉分野の従事者に支払われる賃金は、社会保障の所得再分配を原資としており、需要があるから従事者を際限なく増やすこともできない。そこには、保険制度としての給付と負担という財政の在り方を考慮する必要がある。(そのため、構造的に賃金が低い水準に収れんしてしまう。)
  • そこで、介護サービスの生産性向上を推進する必要があり、09年に厚労省は「医療・福祉サービス改革プラン」にて、40年時点で単位時間サービス提供量を5%以上改善することを目標としている。ロボット、DXをその手段としているが、道は険しい。