はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。集団ストーカー被害記録と、趣味のファンタジーといろんなジャンル書いてます。ご興味のある方はこちら。
 
ファンタジー過去作品はこちら。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。
 
前回の話はこちら。
 

あらすじ。

樹七果は集団ストーカー被害に遭っていた。鶴ヶ峰バスターミナル四番乗り場の並びは順路組と隙間組に別れる。七果は隙間組に混ざって座ったが、バスが来ると周囲の乗客に並んでいるとは見なされず、マナー違反者として列の最後尾に並ぶことを余儀なくされた。

集団ストーカー行為に手を染める友の会は、被害者の拷問データを各国の学者に売って財源にしていた。

 

登場人物

樹七果(イツキ・ナナカ)……二十代、統合失調の烙印を押され、集団ストーカー被害に遭う。バスでクリーニング屋に通勤している。

佐竹……三十代、友の会鶴ヶ峰支部代表

八木……友の会の新人、二十代、佐竹の下働き。

 

 【四番乗り場2】

 

 ある日の朝、七果は順路を守ることにした。隙間組が先に二人座っており、順路側に誰もいなかった。七果は座るつもりはなかったので順路側だが、隙間組の二人の後ろにつくつもりで、ベンチに荷物を置いて並んだ。当然順路先頭は二人分スカスカになるので七果が並んでいると思ってくれる人はいない。順路先頭に誰かが立った。七果は言った。「並んでください」あとから来た客は舌打ちして七果の後ろについた。七果が紛らわしいことをしているマナー違反者のような目で見られた。

 

 別の日の朝も、七果は隙間組の後ろに荷物を置き、順路に並んだ。すると当然、隙間組の人数分、順路側先頭はスカスカになった。どんなにひどい仕打ちを受けても、七果が隙間組の方に回って座ると不利だった。休んでいるだけでバスに乗る予定のない人物と間違えられても言い訳できない。列から外されてしまう危険が高かった。七果は順路側一択しか選べなくなっていた。

 彼女の後から来た老人が七果を無視して隙間側に腰かけた。七果は荷物を挟んで順路側に立っているだけになった。

 

 八木はバスターミナルを見渡せるマンションの一室で望遠鏡を調整し、佐竹の下働きとして七果を監視していた。四番乗り場のいじめはもちろん末端が考えることではなく、佐竹が指令を出している。けれどマニュアルを作っているのは厳密には拷問研究で生計を立てている心理学者だ。マンションの部屋はエアコンが聞いていて、酷暑の乗り場とは快適さが天と地ほど違う。八木は言った。

 「隙間組の方が正規の並びで七果さんは割り込んだみたいな形になりましたね」

 「誰もそんなこと言ってないぞ。後から来た老人はベンチで休んでるだけで並んでいないかもしれない」

 佐竹はせせら笑うようにそう答えた。

 「でもあの後に来た客が老人側に並んだら、七果さんの仲間外れは決定ですね」

 「まだ来てないじゃないか。老人が休んでいるだけで並んでないと主張すれば、七果いじめは本人の被害妄想だ。彼女は怒りたくても怒れない。ピント直してくれ」

 「はい」

 八木は望遠鏡を調整した。

 「ターゲットは文句を言えないでバスに乗れるのか乗れないのか身体を壊すくらい心配することになりますね」

 「逆に加害者に文句をつけて戦おうとしても、どちらでもいい」

 八木は佐竹につられて笑った。

 「彼女が黙っていたら次の客が来た時仲間はずれにできる。怒ったら被害妄想にできる」

 「そうだ。集団ストーカーはターゲットがどちらを選んでも後悔する結末を用意している。これをダブルバインドという」

(続く)

 

【アメクリップ】