はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。

私の記事の紹介です。メッセージボードとほぼ同じです。内容の振れ幅が大きいので、ご興味を持たれた方はこちらをご覧ください。


“ファンタジー”のリンクに飛ぶと、過去作品が読めます。私のバトル、ミステリー、伏線ゼロのゆるゆる作品にご興味のある方はいらしてください。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。

前回までのあらすじ。
東祥子は集団ストーカーで苦しんでいた。しかし濡れ衣で警察に捕まり、薬物所持の容疑をかけられる。その時、女性警官の相武が現れた。彼女は潜入した警察の天敵、ハーメルンだった。

キャラクター紹介

東祥子……33歳。集団ストーカーの薬物混入に苦しむ。統合失調の診断を受け、薬物所持の容疑をかけられる。

山崎……天山警察署の男性取調官。壮年。

高杉……女性警官。祥子の食事の手伝いを任される。

ハーメルン……警察の天敵。武装組織。

舵涼子……ハーメルン職員。相武の偽名で警察に潜入。年齢不詳。

詳しくご覧になる方はこちら!

ハーメルンシリーズは全エピソード、設定違いパラレルワールドでお贈りします。作者に長編を書ききるパワーがないからです。

前作をご覧になった読者様はお気づきかと思いますが、ハーメルンの設定をより簡略化しています。もう何でもアリ。

[眠り姫3]

「東さん、食べてください」
「嫌です」
祥子は冷静に断った。高杉は祥子を休憩室に連れてゆき、食事を強要していた。食堂での問答は周囲への配慮に欠けると高杉が考えているからだ。

回りには昼食を終えて一服中の警官がちらほら。もう煙草の時世ではないので、コーヒーを飲んでいたり、読書や世間話をしている。

高杉は強気だった。
「警察署で死なれたら困るんです」
「あなたが食べたら食べます」
「東さんの食事です!」
高杉は常に不自然だった。祥子を妄想性摂食障害の患者と思っているなら、むしろ安心させようとして毒味するはず。しかし、断固しない姿勢を貫いた。祥子は食い下がった。
「試しに毒味してください」
「警察が毒なんか入れるわけないでしょ!」
その時だった。
「そうだよね!」
「きゃあ?!」
高杉が歩いてきた男性警官に吹っ飛ばされた。最後に締め技を食らっている。男性警官は言った。
「手荒なことしたくないんだけどさ、女性警官って強いから手加減出来ないんだ。ごめんね」
彼はにっこり笑った。高杉は動揺した。
「神田、どういうこと?」
「偽名だ。おれはハーメルンの帝凪(ミカド・ナギ)」
一瞬、間が開いたが、高杉は事態を理解して戦意をむき出しにした。同僚に一喝。
「坂本、何をしてるの」
「おれは若鷺仁だ。よろしくね」
呼ばれた男性職員は言った。こちらもハーメルンか。高杉は青くなった。
「まさか」
「そのまさかだよ。みんなスパイさ」
凪が言った途端、周囲に座っていた休憩職員が全員整然と立ち上がった。

仁も凪も若い。おそらく二十代。仁は凪達のそばに歩み寄り、後ろポケットから紙ナプキンを出した。祥子に強要されたビーフシチューに浸す。ハートのクイーンの柄が浮き上がった。
「大量の薬物反応」
ハーメルンは何事も手慣れていて、感情的になる隊員はいなかった。

祥子は優しい物腰の仁の横顔に、憂いをたたえたマリア像の面影を見た。彼が特に悲しんでいるとは思えなかったが、器の大きな者は美しい。美しいものって時々憂えて見える。見る方がせつなくなるからだ。

凪は問いただした。
「高杉、どういうことだ」
「何のことだ」
高杉はしらをきった。凪もしれっと続ける。場馴れした女戦士のよう。
「食事を運んだのは誰だ」
「朝長」
「作ったのは」
「給食係」
「食材を揃えた奴と、提供した奴」
「ーー」
「それを命じた奴は?」
「そんなの知らーー」
凪は匂い立つ唇で爆発的に艶っぽく笑った。
「そうか。じゃあまるごと取り締まる」

その時警察署に警笛が鳴り響いた。休憩室に複数の警官が駆けつける。高杉は叫んだ。
「スパイが紛れこんだ。捕獲しろ!」
凪達は銃を構える警察側に囲まれた。祥子の前に仁が出てかばう。しかし、凪が降参して高杉を解放する前に、潜入メンバーの中の誰かが一喝した。
「第四班、機動!」
途端に潜入部隊を囲んでいた警官側が、自分たちで勝手に取っ組みあいはじめた。

祥子はハーメルンの潜入規模の大きさを理解した。おそらく高杉も。凪の方は高杉が床の黒い突起を片足で踏んでいるのを見つけたようで、締め技をかけながら面白そうに笑った。高杉は勘に障ったのか、殺すような目で彼を睨んだ。

凪は高杉から手を放した。起き上がろうとした彼女のみぞおちに一打。高杉が昏倒する。
「悪かったね。ハーメルンに人質は必要ないからさ」
ハーメルン側の司令塔が再度一喝。
「牧田、祥子さんの護衛。残りの第二班、四班に続け!」
「了解!」
牧田なる男性隊員が進み出て祥子の手を握るや、他の休憩室潜入部隊員が警官を相手に躍り狂いはじめた。
(続く)

[作者のブツブツ]

ゆるゆる作品とうたっていますように、作者は殺陣が描けません。武術の心得と知識がないのです。期待させるような展開に書いてしまいましたが、バトルシーンは適当にごまかします。他を見ていただきたい作品です。

ご覧くださった方に感謝。