とりかへばや とりかえ 18 | 答他伊奈(とうたいな)の小説庫

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令和から「答他伊奈」で統一。

 源義守の見舞いにも羽月の時と同じようにした。顔を朱色でそめた卯月を横に寝かせた。羽月は家の奥に隠れさせた。

 夕暮れ時に訪ねて来た義守を庭に秀島は案内した。御簾越しに卯月は横になっている姿がわかるはずである。

「ご覧の通りふせております」

 秀島は義守に伝えた。

「卯月、具合はよくなったか。元気なお前が病に伏しているとは信じられない」

 義守は言う。

 卯月は声を出さない。羽月と多少声が違う。わかってしまうのが怖かった。

「なんとか言え」

 義守が強く言う。

 声変わりした声が大人の声だ。卯月は身を固くした。

「ええい」

 義守はそういうと階をあがり御簾をめくあげた。秀島は黙って見ていたわけではない。驚きひと息遅れて義守のあとに続いた。

「待って」

 秀島の止めは遅く御簾はあげられた。

 卯月からなんとも言えぬ高い声がもれた。朱色の顔で義守を卯月は震えながら見た。

 朱色の顔に義守も驚き無言になり立ちすくんでいた。

「気が済みましたか。ここから出ましょう」

 秀島は義守を御簾から出した。

「まだ熱が下がらぬゆえにお仕えできません」

 秀島は義守に邸には行けませんよ、当分無理ですとつけ加えた。納得したのかわからぬが義守は帰って行った。御簾をあけるとは思っていなかったゆえに秀島は強い疲れを感じた。すくなくとも二人が入れ替わっていたことはわからないだろうとは思った。