とりかへばや とりかえ 15 | 答他伊奈(とうたいな)の小説庫

答他伊奈(とうたいな)の小説庫

令和から「答他伊奈」で統一。

「十一です。女童ですよ」

 考えてもいなかったことを言われ、卯月は頭を目いっぱい回転させて言葉を選んだ。

「十一ならばもうすぐ裳着の儀をそちもおこなうであろう。裳着のあとだ。身分が低いようだから正室にはできないので妾になれ」

 若者は当然という態度で卯月を見て言った。

「裳着は何年も先の話です」

「だがいずれ裳着はおこなうであろう」

 若者の言葉に卯月は追い詰められていく。

「もっと身分のある方を」

 卯月は知恵の限りを絞り出そうとしていた。

「われはお前がいい」

 ぞわぞわと卯月の体に鳥肌がたちはじめた。女の華やかな衣装は好きだが男が好きなわけではないとはじめて卯月は意識した。ここにいたくない。卯月は逃げ出すことにした。平清明の邸の誰にも告げずに邸から出た。逃げ出した。

 家に戻ると母親に若者に言われたことをすべて話した。早く帰って来た卯月に驚き、話を聞いて倒れそうなくらいの驚きの体型をした。

「おたあ」

 卯月は叫んで母親を支えた。

 驚いたのは家に帰って来た佐伯秀島もだ。すぐさま子どもたちに女装、男装をやめさせた。そして仕えはしばらく休み、見計らってからやめると伝えると言った。

「羽月も? なんの問題もおきていないのに?」

 羽月は不満だった。

「卯月に問題がおきた。羽月になにかおきるかもしれぬ」

 秀島は怖い顔して羽月を見た。

 秀島は考えていなかったことがおきてこれが正しい対処なのかわからなかったが、平清明の邸にいかせるわけには行かなかった。

 翌日二つの邸には人を使い病で行けないと伝えさせた。