心理学に、人間は幼い頃に無意識の内に自分の人生の脚本を書き上げていて、それに沿って人生を歩んでいるという説があります。その脚本がどんなものか知り、それが今の自分にふさわしくないものならば、そこからの脱却を目指すこともできるとされます。当否はともかく面白い説ではありませんか? 幼い頃に好きだった物語は自分の人生脚本に影響を与えているかもしれないと考えられてます。
私が子どもの頃に好きだった物語は沢山ありますが、その一つにアームストロング・スペリー『海をおそれる少年』があります。これはポリネシアの島が舞台の話です。
マファツは酋長の息子でしたが、幼い頃に海で溺れ、その時に母親を亡くしているので、海が怖くてしょうがない。島民の生活は海に出ることで成り立っているので、酋長の息子なのに臆病者のマファツは当然バカにされます。それに耐え切れなくなり、自己嫌悪に駆られたマファツは、決死の覚悟で一人カヌーで海に乗り出します。嵐に遭い潮に流され、マファツは巨大な偶像が祀られた無人島に漂着します。そこで生き残るために、必死で猪や鮫とも格闘しました。そんなある日のこと、タムタムの音と共に見知らぬ部族が上陸してくる気配を察したマファツは島を脱出します。再び大海原に出たマファツが漂着したのは故郷の島でした。猪の牙の槍を持ち、鮫の歯の首飾りを着け、逞しく成長したマファツを父親と島民たちは誇らしく迎え入れました。
『海をおそれる少年』は、貴種流離譚であり、往還物語であり、ビルドゥングスロマン(成長物語)であり(以上は物語の類型です)、いわば物語のテッパンを押さえているので面白くないわけがないですね。という訳で、まんまとそれにハマった私は😂、子どもの頃この話が大好きでした。ただしこの話が私の人生脚本に影響しているかどうかはわかりません😁。
因みにアームストロング・スペリーはボラボラ島に行った時に『海をおそれる少年』の着想を得たそうです。ボラボラ島へはいつか行ってみたいんですよね。
子どもの頃に好きだった本はともかく、好きな恋愛小説を挙げるのはちょいと気恥ずかしい気がします。「こういう恋愛経験があるのかな?」あるいは「こういう恋愛が理想なのかな?」と思われそうで(それよりカラオケでどんなラブ・ソングを選ぶかの方が恥ずかしいかも😊?)。しかし私自身の好きな小説の中に、正面切って“恋愛小説”と言われる作品はないんですよねえ。まあ恋愛がメイン・テーマじゃなくても、大概の小説作品で恋愛関係は描かれますけどね(私が好むのは切なくて痛ましい話なんで、恋愛が正面に来ないのかもしれません。痛ましいけど、ただ悲惨なだけじゃなくて、それに抵抗する勁さみたいなものを感じさせる作品が好きなんですけどね)。好きな恋愛小説を強いて挙げるなら、夏目漱石の『三四郎』ですかね。三四郎は可愛いですよね😄。
私の勝手な印象ですが、アラン・フルニエ『グラン・モーヌ』とフィッツジェラルド『グレイト・ギャツビー』は男性が好む恋愛小説という気がしています。というのは複数の男性がこれを好きな作品に挙げていて、女性でこの作品を好きと言っていた人に会ったことがないというだけの話なんですけどね😄。私は人づきあいが多いとは言えないので、全然統計にはなりませんけど😁。
アラン・フルニエの『Le grand Meaulnes』は今では忘れられた小説だと思います。直訳すると「偉大なるモーヌ」で、『モーヌの大将』と訳されてたことがありますが、これでは作品の雰囲気が伝わらないと思われたのか『さすらいの青春』なんて題名で出版されてたこともありました。
自由で大胆なモーヌという少年は、ある日授業を抜け出して旅をし、ある館に辿り着く。そこでは娘の誕生パーティーが行われていて、モーヌはその娘に一目惚れをする。すべてが夢のように美しい夜だったが、後年その娘に再会したモーヌは青春は過ぎ去ったことを悟るのだった。女性に対する憧れと幻滅。夢と現実のギャップを悟ることが大人の階段を上るということでしょうか。
フィッツジェラルドの『グレイト・ギャツビー』は有名な作品だし、映画化も何度かされましたね(これにもある時期『夢淡き青春』なんて邦題が付いていたことがありました😁)。隣家の富豪の令嬢に恋して出世して、後年再会して、旦那の不倫に神経を病んだ彼女の愛人となり、彼女が起こした交通事故の身代わりになる男の話です(まとめすぎ😁)。惚れた女には命がけ。男のヒロイズム・ダンディズムをくすぐるストーリーなんですかね? デイジーなんて大した花じゃないのに(ヒロインの名前です😄)。ただしこの小説は、ストーリーを伝えただけでは意味がない、陰鬱ともいえる名状しがたい雰囲気のある作品なので、一読の価値はあります。
あなたの好きな恋愛小説は何ですか? それはあなたの実体験あるいは心の真実を反映していますか😊?
追記:はからずも grand (フランス語も英語も同じ意味)も great も、“偉大なる”という意味ですね。「グラン・モーヌ」と「グレイト・ギャツビー」の偉大さは、社会的地位を表すものではなく、“心映えや行動が素晴らしい”というようなニュアンスだとは思うのですが、やはり男性の中には「偉大なる存在でありたい」という願望があるのかしらん?などと考えたりしてしまいます😅。