去年芥川賞を取った西村賢太さんですが、初めて読んでみました

芥川賞を取ったときに聞き知っていた生い立ちなどと比べても、「焼却炉行き赤ん坊」も「小銭をかぞえる」もともに完全に私小説といった雰囲気です。
私小説は作者の自意識がどう見えるかによっては、鼻について読んでいられないものになることがありますが、西村さんにはどんどん引き込まれていきました

惨めなことに惨めなことが重なって、状況がそういう風に至る原因は分かっていたにも係わらず、逆上した思いに駆り立てられた言葉や暴力は止まずに、状況は息苦しくなるばかりです

それを読むことによって追体験する僕自身も暗澹たる気持ちにしかならないはずですが、西村さんの選ぶ言葉や文章の力によるのだと思いますが、読後感は悪くはありません

せっかくの日曜日だというのに、何の予定もなくて、1人で映画の「ヒミズ」でも見ようかななんて思っているわけですから、息苦しさに感化されるにはうってつけの状況ですが、カタルシスさえ覚えてしまいます

僕自身も風俗嬢に貢いだ苦々しい経験などもあり、西村さんとそんなに変わらないのにです

町田康さんの書く解説自体も素晴らしいですね

小市民的な体裁を気にするあまりに先回りして備えることが空回りして、かえってどんどん追い詰められていくといういつもの町田節といった感じで素晴らしいものです

町田さんの多くの作品も私小説という雰囲気がありますが、町田さんは何かをしでかす前に逡巡して空回りする自意識という感じなのに対して、西村さんの自意識は逡巡はありながらもやってしまった後のざらついた痛みが強く感じられるように感じます

1人で私小説の自意識と交感して過ごす日曜日というのも悪くないかななんて思います

