今回 ♪こぎつねコンコン山の中~ の

「子ぎつね」について調べてみました。

ドイツの古いメロディをを元に

教育者でありオルガニストであったエルンスト・アンシュッツが

1824年に発表したそのタイトルは

「キツネよ、お前はガチョウを盗んだね」

内容は、ガチョウを返さないと銃で撃ち殺すぞ、というもの。

2番の歌詞なんて「撃ったらお前は真っ赤に染まるだろう」

3番になると、声色が変わり、

「可愛いキツネ、頼むから泥棒にならないでおくれ」

 

現在でもドイツ圏では広く親しまれた歌なんだそうな。

盗みはいけませんよ、という教育的な歌なんだろうけど、

日本ではありえないなあ。

まあ、だからこそ「こぎつね」なんて可愛い詩が作られたのでしょうけど。

 

日本でこの「子ぎつね」が生まれたのは

戦後の最初の教科書に載せるためです。

1947年(昭和22年)刊行の

文部省発行教科書「三年生の音楽」に収載されました。

これが文部省編の最後の国定教科書となり、

その後は現在の検定制へと変わります。

 

新しい教科書のための教材は次のような基準で集められました。

(1)従来の文部省唱歌にあって歌曲ともにすぐれたもの

(2)わらべうたのなかで特にすぐれたもの

(3)民間の作詞作曲家の手になった童謡ですぐれたもの

(4)新作したもの

(このとき初めて作詞者・作曲者が明記されました)

でも、それまでの学校の音楽と言えば戦意高揚的なものばかり。

やっと平和な世の中になり、

子供たちに音楽を楽しんでもらおうと思っても、

各学年22曲をそろえることは大変だったと思われます。

特に上級生用の曲は上記の規準で削除したら、

残らなくなってしまったそうです。
いきおい、外国曲に歌詞をあてはめた曲が多くなってしまったのは

仕方のないことだったのでしょう。

上級生用ではありませんが、

「子ぎつね」もそんな中の一曲になったわけです。

 

他にも、輪唱教材を載せたことで合唱ブームの、

伴奏譜を載せたことで(検定教科書では削除)

ピアノブームの発展へとつながったりと

その画期的な内容は

昭和24年からの民間による検定教科書のお手本になったようです。

 

「子ぎつね」の作詞をした勝承夫(よしお)さんは

この時の編集委員でした。

他に「故郷の人々」(フォスター)「かすみか雲か」「灯台守」「夜汽車」「歌の町」など。

(作曲は岡本敏明、平井保喜(康三郎)が担当、

小林つやえ、勝承夫が作詞を担当しました。

戦争中の国民学校の唱歌編纂に関わった委員はひとりも含まれていないとか)

 

折しも今日は文化の日。

1946年11月3日が憲法公布日、

そして1947年5月3日が憲法施行日。

ごくごく簡単に言うと、

日本国憲法が「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことから

11月3日が「文化の日」となりました。

新しい憲法が作られ、

教育基本法、学校教育法も1947年3月31日に公布されたのです。

その頃の関係者の思いやご苦労、

そして、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことの意味、

そんなことに「子ぎつね」のおかげで

思いを馳せることができたのでした。

 

 

 

 

 

 

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