頭に鈍い痛みを覚えながら目を覚ますとそこは何の調度品もない無機質な部屋だった。
こつこつ。
と足音が聞こえ、顔をあげると、見慣れた顔がそこにはいた。
「鬼道…くん?」
泣くのを我慢しているような表情を浮かべた鬼道は一歩、一歩、ゆっくり近づいてきた。
「おい鬼道くん。ここどこだよ」
「すまない」
「どこだよ」
「すまない」
すまないと繰り返す鬼道は下唇を噛み、目の下には深いくまが刻まれていた
「鬼道くん。とりあえずこっちこい」
そう言っておいでおいでをすると鬼道は不動に近づいて目の前で膝をついた。
「なんでお前がそんな風になってるか知らねーけどさ。お前にはチームメイトもいるし俺だっていんだろ、そんな溜め込むなんて鬼道くんらしくねーぜ?」
そう言って抱きしめてみたが、いつもはまわされる手がだらんと下に垂れていた。
「…不動」
「ん?」
「愛してる」
鬼道はそう呟いたと思うと、手を不動の喉元に添えた。
「鬼道くん?これじゃオレ、鬼道くんに殺されそうなんだけど」
「殺せたらいいんだがな」
きゅ、と手に力を込めて、そこからゆるくゆるく、徐々に力を強める。
「…っき、…ど……っ」
気管を圧迫され
酸素がうまくはいってこない。
苦しさで鬼道を押し退けようとするが、指が手が腕が重く上手く力が入らない。
視界が白く霞んで
ああ、死ぬのかな。なんてぼんやり考えたところで鬼道が手の力を抜いた。
「…っひゅっ、げほっがはっ」
一気に気管に押し寄せる酸素にむせながら、いつの間にか涙で滲んだ目を鬼道の方にむけると
鬼道はさっきまで不動をしめていた手を見つめながら、口元にだけ笑みを浮かべた不恰好な笑顔を顔に貼りつけていた。
「ほんとうに…殺せればよかったんだがな…」
死んでほしくはないんだ
そう言って鬼道は不恰好な笑顔のまま涙を流した
「俺は死にたくはねーけどさ」
鬼道くんになら殺されていい
そう言って不動は鬼道の手をつかみ自分の首に添えさせた―。