朝目を開けると可愛らしい由紀ちゃんの寝顔。

可愛いなってキュンとして、眠りにつくと

たかみなに起こされた。

「佐江ちゃん、由紀ちゃん朝だよ」


「おはよ」

起き上がり、着替えをする。

今日は自由行動をしていい日で、事前に計画した行動計画の通りに遊びに行く。

私服をみんな着ている。

佐江ちゃんは、私服はボーイッシュでジーンズにシャツに帽子。相変わらずかっこいいなあ。

私は動きやすいからワンピースにした。

「由紀ちゃんのワンピース可愛いね」

「ありがとう」


佐江ちゃんが褒めてくれた。

朝食でみんなと待ち合わせして食べに行くときも、「由紀ちゃんのワンピース可愛いね」ってみんなが褒めてくれて。すごく嬉しかった。


今日はたかみなちゃんと交代で優子ちゃんが部屋に来る。

「佐江ちゃんと由紀ちゃん今日よろしくね」

「こちらこそよろしくね」


ご飯を食べたら出かける。

自然でいっぱいな場所に水族館と動物園があり、行く。

たかみなちゃんとあっちゃんがお互いに好きなんだろうなってわかるし、優子ちゃんは陽菜ちゃんにちょっかい出していて、すきなのが伝わる。


みんながそれぞれ水族館で自由行動を仕出したので、3組に別れて15分だけ別行動して再度集合することにした。

私は佐江ちゃんに、ペンギン見ようよって引っ張られてペンギンを見た。佐江ちゃんといて、安心してデートしてる気持ちになった。

「由紀ちゃん髪はねたよ」

って気遣いが凄くて。

まだ出会ってそんなに経ってないけど気遣いが凄かった。


イルカのショーはみんなで見るからその間にいろんな場所に向かった。

「人が混んできたし危ないから手をつなごう」って佐江ちゃんに言われて手を繋ぐ。

佐江ちゃんの顔が真っ赤になっていたのがわかった。


まだまだいじめがあったから、人に対して警戒はしてるんだけど、佐江ちゃんに対してはなんだろうな。すごく安心感があった。


みんなと合流したあとは、みんなでイルカのショーを見て。お土産コーナーに行きみんなでおそろいのイルカのストラップを買った。


そのあとすぐ近くの動物園にも行き、

動物が苦手な私。

佐江ちゃんがおりにいるんだから大丈夫だよと。

まあそうなんだけどさ。

風が拭いて、スカートがめくれそうになったときにさりげなく佐江ちゃんがまくれちゃうってスカートを抑えてくれたり。

「佐江ちゃん優しいね」

ってみんなが言う。

「佐江いつもみんなに優しいし。」

って言うけど、みんなは笑っていたよ。


動物園のフードコートでご飯を食べて、ちょっと歩いてモールみたいな場所に入りゲームセンターとか遊び場があるところへ。

みんなでプリクラを撮って普通に買い物したりして。


18時にはホテル着にいなきゃいけないから、17時にはその場から離れてバスで戻る。

そして、部屋に優子ちゃんがやってきた。

「優子危ないから1人で寝てよ。佐江と由紀ちゃん一緒に寝るから」

「ねえ、付きあってる?」

「なわけあるか。佐江女だし」

「今どき同性カップルもいるよ」

「付きあってないよ」

優子には佐江ちゃんの寂しそうな顔に見えた。

由紀ちゃんのことどんどん好きになっているんだろうなあって。見ればわかる。


「とりあえず部屋着に着替えさせて」

私たちの目の前で関係なく裸になり普通に着替える優子ちゃん。

「隠さないの?」

「別に女同士だし。」

その感覚すごいな。


佐江ちゃんがトイレに行ったタイミングで優子ちゃんに聞かれた。

「どんないじめ受けてたの?普通に仲良くなりたいからさ、傷つけるようなことはしたくないし。」

「入学してすぐくらいに、告白してくれた男の子がいて断ったんだけど、その男のコのことがすきな女のコからひがみでいじめられたんだ。」

「それはひどいな。まあ由紀ちゃん可愛いからね。」

「いやいや。優子ちゃんの方が可愛いもん。モテるでしょ?」って。

「そんなことないよ。意中の人に好きになってほしいからね。」

「やっぱ陽菜ちゃんがすきなの?」

「あっ、知ってるの?」

「まあ、優子ちゃん、陽菜ちゃんのこと追いかけてたから。」

「ねえ、由紀ちゃんは佐江ちゃんのことどう思ってる?」

「優しい人かな。気配りをしてくれる。」

「それ以上の感情は?」

「好きって意味?」

「優しいけど好きって感情かはわからないかな」


佐江ちゃんが戻ってきたから、私もトイレに。

「水族館デートどうだった?」

「手を繋いだよ。混むから手を繋ごうって。緊張した。」

「告白はしないの?」

「向こうはまだ気を遣ってるのに、したって驚かせるだけだもん。」

「佐江ちゃんが由紀ちゃんに対しての気配りがすごくて。感動だよ。」

「単に勝手に好きなだけだもん。優子だってにゃんにゃんに振り向いてほしいでしょ?同じだよ。」


「佐江の気配り見習わなきゃな。」


みんなでご飯を食べたら、すぐにお風呂。

恥ずかしいから早めに洗って湯船に浸かる。

佐江ちゃんがいつも以上に静かで心配になる。

「大丈夫?佐江ちゃん。具合悪い?」

「ううん、大丈夫」

顔色が悪そうに見えたのは気のせいかな?



佐江はね、あのときめっちゃドキドキしていたんだ。好きなんだよね、由紀ちゃんのことが。


お風呂から出て先に行くねって伝えて、佐江は先に部屋に戻り泣いた。

どうしたらいいのかわからないくらい泣きたくなった。きつかった。

みんなが帰って来る頃には先に出ていたあっちゃんやたかみなの部屋で話を聞いてもらった。

「そんなに好きになってるんだね。苦しいくらい辛いんなら、気持ち言ってもいいんじゃない?ただ、覚悟は必要だけどさ」


「嫌われたくはないもん。」

まあそうだよね。

泣いたのがバレないように部屋に戻る。

「佐江ちゃんなんかあった?」

すぐに由紀ちゃんに言われた。

「ううん、なんでもないよ」

「顔色悪そうに見えたから具合悪いのかなって」

「大丈夫。元気」

「佐江、泣いたんでしょ?」

優子が余計なこと言ってきた。

「えっ?どうしたの?」

「ほんとに大丈夫だから。心配しないで。」


佐江の方をチラチラ見ている。

何事もなかったようにして、寝る時間に。

「おやすみ」

一緒に眠る。



私の中で佐江ちゃんが様子がおかしいのが気になっていて。

泣いたみたいだし、ならなんで言ってくれないのかな?って。


朝になって、隣で佐江ちゃんはぐっすりと眠っていたから起こさないように部屋から出た。

やっぱり近くにいるから、気になっちゃって。

みんながいるホテルのフロアのソファーに、1人座っていたら、優子ちゃんが来た。

「どうした?起きちゃった?」

「佐江ちゃんがなんか様子がおかしいのが気になっていて。隣にいて安心するし、だから佐江ちゃんが困っていたら助けてあげたいのに。

佐江ちゃんが何を

思っているのかわからなくて。」



由紀ちゃんは朝から泣き出しちゃった。

「由紀ちゃんは普通に佐江ちゃんに話しかけてあげなよ。そのうち、佐江が話そうってなったら助け舟出すだろうから。」

「うん、わかった。」


部屋に戻る。

「二人ともどこ行ってたの?」

「ソファーでお話していた。」

優子ちゃんがトイレに行く。

「佐江ちゃんが思ってること溜め込まないで言ってほしい。泣いたりしてるのに、佐江ちゃんの気持ちがわからなくて、一緒にいて不安になる。」


「大丈夫。なんもないよ。」


結局なんも言ってはくれなかった。

最終日楽しまなきゃね。


最終日、佐江ちゃんと常にそばにいた。

様子がやっぱりおかしくて。

聞いても答えてくれないしさ。


バス移動の間は、佐江ちゃんの手を小さく握った。

佐江ちゃんが握り返してはくれないけど、ずっと私の顔を見て話してくれる。



3日間の旅行はあっという間に終わる。

明日は振替休みで休日に。

佐江ちゃんが2人で遊ばない?って誘ってくれた。

嬉しいからもちろん遊ぶって答えた。


「佐江の家来て」って言われて家は知らないから佐江ちゃんが迎えにきてくれて家に入る。


佐江ちゃんの様子が気になって、私は言わずに見ていた。

「ママもみんないないからこれしかなくてごめんね。」

ジュースを出してくれた。

「佐江ちゃんありがとう」

私の中で佐江ちゃんのことが気になっていた。もっと仲良くなりたくて。

佐江ちゃんがおやつを探してるときに後ろから抱きしめていた。


「由紀ちゃん?」

「佐江ちゃんの様子がおかしくて、私なんかしたかなって思って。

旅行中も色々気遣って、私を入れてくれたの実は迷惑だったのかなとか色々思って。」


「ごめん。迷惑なんかじゃないよ。むしろ逆だもん。」

「えっ?」



佐江ちゃんが私を抱きしめる。

「はじめて会ったときから、由紀ちゃんのこと可愛いなって思っていて。だから、輪に入れてなるだけそばにいたいって思った。佐江、いつの間にか由紀ちゃんのことを本気で好きになってたんだ。」


涙を流しながら言われた。

「ごめん、キモいよね。佐江、女だしこんなこと言われたくないよね」

佐江ちゃんが大泣きしていて、ようやく意味がわかった。

私のことを好きになってくれたからなんだって。


佐江ちゃんにありがとうって気持ちで抱きしめ返したら佐江ちゃんに

「ごめん」って言われて家を飛び出した。

「好きって言ってもらえてすごく嬉しかったのに。」


佐江ちゃんを探さなきゃ。

どこにいるんだろう?というかあんまり動くと佐江ちゃん家に戻れなくなり佐江ちゃんに電話をする。けど出ない。


優子ちゃんに電話してみた。

「由紀ちゃんどうした?佐江?いないよ。

にゃんにゃんやめてよ。探してみる」

優子ちゃんは陽菜ちゃんと出かけているみたい。


近くに公園があった。

今日は誰もいなくて、かくれんぼするなら最適な洞窟みたいな場所に行ってみた。

そこに佐江ちゃんはいた。

「良かった。佐江ちゃんいた」

「由紀ちゃん」

めっちゃ泣いていて、気持ちがすごく伝わってきた。

「佐江ちゃん、私佐江ちゃんに好きって言ってもらえて嬉しかった。キモイなんて思わない。だって、私なんか好きになってくれるなんて嬉しいもん。だから、ありがとう。泣かないで」


「旅行中も一緒に寝ようって佐江から言ったけど、いきなり由紀ちゃんに嫌なことしないかな?とか気持ちを抑えるのが大変で。

だから、急にいなくなったりした。ごめん。

今まで通りに友達としていてもいいかな?

由紀ちゃんとはずっと仲良くしていたい」


「もちろん。」

あっ、優子から電話。

「佐江、由紀ちゃんが探してるぞ」

「ごめん。今あった。」

「泣いてるの?」

「大丈夫。心配させてごめん。」


「佐江ちゃん、部屋に戻ろう」

「うん」

それから、佐江ちゃんはスキンシップ的なことは一切しなくなった。

私がさりげなく手を繋いでも離されたり、みんながおはようって抱きついていても、私にはハグはされない。


多分、気持ちを押し殺したんだと思う。

好きって言ってもらえてすごく嬉しかったのにな。


「ねえ、佐江。告白したんでしょ?付き合わないの?」

「由紀ちゃんは、佐江のこと友達としか思ってないよ。」

「わからないじゃん。」

「なんも言われてないもん。」

「でも、由紀ちゃん見てるとたまに佐江ちゃんの手を握ったりしてるじゃん?

ハグだってしてる。由紀ちゃんに距離おいちゃだめだよ。」


「そんなことはしてないよ。でも、ちゃんとブレーキかけなきゃ顔見たらキスしたくなる。

由紀ちゃんに嫌われたくはないから。」


「佐江ちゃん」

「ほら、愛しの由紀ちゃん呼んでるよ。」

「行ってくるね」


好きな人のことを友達と思うって無理だよね。

涙が出てきた。