続きです。

 

あの夢が始まる。
いつもそう確信しながら、夢に入っていった。

                    *
 

巨大な白い月が青い空に浮かんでいた。
他にも大きさの違う月がいくつかあった。
 

ここは「別の星」。
 

 

 

地球に似ているけれど、全体的に緑が多かった。
高層ビル群もあったけれど、ごくわずかな地域だけだった。

ヨーロッパのどこかの国のような石造りの町もあった。
砂漠もあった。
もしかすると、それは戦争の後の廃墟なのかもしれない。
自分が想像しているより、大きな星のよう。

科学は、地球よりも随分と進んでいる。
エアバイクのようなものによく乗っていた。
反重力のようなものと、”今の私”は思う。
高速道路のようなものがあり走らせていた。

惑星間を航行できる船もあった。
宇宙港のような施設を見た。

この星のエネルギーは何を使っているのだろう。
化石燃料でもなさそうだったし。

一度、エネルギーセンターのような施設に入った夢を見た。
何かの力(忘れた) をエネルギーにしていると、
”その夢の私”に教わった。
鉱石かそういうもの。

ムーの時と同じだなと、”今の私”が感心していた。

                    * 
        

最初に見たのはどんな夢だったのか思い出せない。
それほど多くの夢を夜毎に見た。
 

大きな建物の中で、仲間と暮らしていた。
彼らにはそれぞれ能力があった。
超能力のようなもので、今では考えられない程の強い力だった。

それぞれその能力に応じて、本部から「仕事の依頼」が来る。
仲間の何人かと組んで依頼をこなしていた。

私が見たのは、ひたすら「仕事の夢」。
その多くを一人の男の人と組んでいた。

<彼は、リュウ>

 

夢から現実に固有名詞を持って帰れない私が分かった、
数少ない名前。

<彼は、洞窟の夢のリュウと同じ人>

”今の私”がそう確信していた。
姿形は違うけれど。

彼の能力は強かった。
物を動かすテレキネシスのようなものや、瞬間移動など、全般的に使っていた。

私はテレパシーや治癒。
死ぬほどの怪我や病気でも直していたよう。
他のもそこそこ使っていたようだけど。

仕事の内容は、今で言う「特殊部隊」のようなものだった。
人質の救出もするし、暗殺もする。
エネルギーセンター(のようなもの)に潜り込んだ、テロリストと対峙したこともあった。

共同生活をしていた建物の中には、光庭のような場所があった。
そこには花や様々な植物があった。
「温室」らしい。

仲間の中に、花や植物が好きな人がいた。
ひざまで届く、ゆるいウェーブのかかった金髪の人。
微笑むと周りを明るく照らす人。
何度、この人の笑顔に救われただろう。

<彼女は、サラ>

洞窟の夢のサラと同じ人だと分かった。
もしかすると、この人を夢の中で見たのは、こっちの夢が先だったかもしれない。
姿も似ていた。
彼女の力は、水。
水を自在に操る。

                    *

 

この星の夢を、「洞窟の夢」を始めて見た次の日から、
夜毎に見るようになった。

毎夜、魂だけが”違う世界の私”の中に入っていると思っていた。
そして、時々”もう一人の私”が説明をする。

けれど「情報」としては乏しい。
背景や、情景など、基本的なものは何も分かっていない。
ただ、漠然と「仕事の夢」を次々と見せられていたという気がする。


リュウとサラ以外の人物さえ、この頃の私は把握していない。



夢は、高校生の間の3年程続いた。

夢を見続けていた間の私は、
今の私と夢の私を行き来する、とても不安定な状態だった。

授業中に誰かの”聞こえるはずの無い”声が聞こえて泣いてしまったり。
白昼夢のように、目を開けているはずなのに夢の続きを見たり。

けれど、突然その「二つの世界」の夢を見なくなった。
理由は分からない。
その時私は、なんとなく
「今の私に必要な情報を全て受け取ったんだな」
と思った。


そして、高校を卒業した春のこと。



(前世の仲間 3 に続く)