胸がいっぱいになる話・・・No2 | ☆天然系あやのさぷり☆

胸がいっぱいになる話・・・No2

『五人分のクリスマスケーキ』
       
                   群馬県前橋市 佐藤 紀子さん(18)

この年は私にとって一生忘れられない年になりました。父が一年間の闘病生活の末、12月23日にこの世を去った年です。23日と24日にかけての深夜から、葬儀の打ち合わせが行われ、家の中は今日が本当にクリスマスかと思うほどの重い空気が流れていました。
 街はどこもかしこもクリスマス一色の華やかな色に包まれ、24日は通夜、25日は告別式と重い空気のまま、年末を迎えていました。
 そんな折、父のことを一年間励まし続けてくれていた、父の古くからの知人で、同じ秋田県出身のおばさんが、私たちの気持ちを思い、クリスマスケーキを買ってきてくれたのです。
 おばさんは告別式の翌日、夜の7時頃「こんばんは」と突然家にやってきて「ケーキは食べたの」と言うので、私は「いえ、食べていません」と言うと、「じゃあ、おばさんにはこのくらいのことしかできないから」と言って、きちんと父の分も入れた5人分を下さったのです。
おばさんは「こんなことくらいしか…」なんて言っていたけれど、私たちにとっては、十二分なくらいの温かさでした。小さな心遣いが私たちの心を和ませてくれたように感じました。