困っている老人の友人宅に歩いた。
ここです。
と老人に言われる前から異臭がしていた。
一戸建てのガレージにはバンが1台ある。
そのバンはもう走ることはない。
高齢者事故の増加から、
免許証に年齢制限ができた。
つまり老人が運転できるのは、私有地かサーキットしかない。
その代わりシニアカーが普及した。
カセットコンロ燃料や
灯油で発電するハイブリッドも。
制限速度は上がり、道路にシニアレーンまでできたのだ。(歩道の車道側)
スマホのスタンドつきでGPSとライブカメラで家族に見守られている。
そして、各家庭の車はゴミ入れになることが増えた。
捨てられずにたまるゴミを車に押し込んだ。
それが溢れるとガレージに。
それも生活すれば増える一方だった。
玄関には
【臭い】
【出て行け】
【いい加減にしろ】
などの貼り紙。
その下からチャイムを探し、老人が押す。
『俺だい。大丈夫かね。』
声を張って友人を呼ぶ。
≪カチャ≫
玄関は少し開いて、老人の顔を確認してから友人が出てきた。
山野は貼り紙をむしっては丸めた。
「誰だい?
役所かい?」
友人は山野をドアに隠れて覗く。
「彼は、ゴミの処理を手伝ってくれるらしい。」
老人
「こんにちは。」
山野は丸めた紙をポケットにねじ込んでから会釈した。
「悪いですよ、
私の甲斐性が無いばかりに。」
ドアを開けて半身を出した。
「いや、
私が高齢になったらみんなこうなりますよ。
環境、環境って人間のことは後回しの政治家だって、こうなります。」
と笑ってみせた。