ドアが揺れるほど大きく叩かれ、監督は後退りした。
真っ暗な中、便器横に手を伸ばすと柄付きブラシを見つけた。
それを構えることしかできない。
「ゥウゥ」
ドアの向こうから漏れる声。
「ん?
料理人か? 幽霊か?
どっちだ?」
その時!
「あのう、まだですか?」
弱々しい声だった。
「は?
もしかして、亀田君?」
聞き覚えのある声だ。
ブラシは構えたままドアのロックを外す。
「あ、監督ぅ。
交代してもらえません?
隣は和式で、」
カメラマンの亀田君の声に安心してドアを開けた。
「お、おお、悪かったな。」
すぐに交代してやることにした。
「すいませんすいません。
和式は腹が支えてひっくり返ったことがあるんで。
え、監督ぅ、何で掃除なんか?」
不思議そうにブラシを見つめたあとに鼻をつまんで洋式の個室に滑り込む亀田。
「いや、別に。
あ、電気付けてやる。
スイッチを教わったんだ。」
ブラシを持って出てきた監督。
廊下の様子を伺ってからスイッチを押した。
数分後
「はぁー、スッキリ。」
亀田が個室から出る。
「ぅわあー、ドッキリ!
監督、まだ居たんですか?」
「あ、ああ、ここで見張ってた。」
監督
「何を?」
亀田