RIVER KID5 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

監督は階段を下りきりトイレの矢印を見つけた。

廊下の突き当たりがトイレのようだ。

「どうだ?」

  「あぁ、よく切れる包丁になった。」

「今日の団体さん、SNSでここに来たようだな。」

  「便利な世の中になったなぁ、
       これでテレビで放送されりゃ、
     この旅館も安泰だな。」

「もっと肉が欲しい。
     団体さんの肉だ。
     もっともっとだ、若い柔らかい肉が欲しい。
    松の間は老夫婦だったな。」

「明日は若いタレントが来る。」

 厨房から漏れるのは明かりだけではなかった。
 料理人の二人の会話だ。

あと数歩でトイレに行けるのだが、監督は厨房の手前で立ちすくんでしまった。

「そっちのナタも研いでくれ、忙しくなるぞ。
   俺は骨を叩き割ることにする。」

《ボギッ、グシャ》

骨の砕ける音だ。

監督は、先週放送の山姥(やまんば)を思い出す。

「大変だ、早く知らせないと。」
踵を返すと

   ガラガラと厨房の戸が開いた。

「イギッ」
監督は振り返ることができない。