大広間では、焼きたてのヤマメ、キノコ、山菜、そしてイノシシが並ぶ。
が、それは他のお客様のお料理だ。
彼らは宿泊はするが、素泊まりに近い。
ヤマメだけは監督のポケットマネーでスタッフに振る舞ったのだ。
会社の経費内の質素な料理が運ばれていた。
それでも温泉を堪能し、すぐに休むことにした。
明日は日が昇る前にここを出るのだ。
女性スタッフはいない。
一部屋に全員で寝る。
その夜中。
監督は起き上がる。
窓からの月明かりをたよりにトイレに向かう。
「イテッ! 」
お兄さんは足を踏まれたようだ。
がまたいびきをかきはじめた。
「ん? わりぃわりぃ。
えーとトイレはどこだ?」
監督は壁をつたい歩きしてトイレを探すが部屋には無いことを思い出す。
「下か。 漏れちまうぞ。」
木の廊下をミシミシさせ階段の降り口に着いた。
すると、
《シュッ、シュッ。》
《シュッ、シュッ。》
と聞こえてきた。
「なんだぁ?」
監督は階段を下りると、その音は徐々に大きく聞こえた。