私としたことが、デモ機と売り場のサンプルを間違ってしまって。」
親子の前に現れたのは、サイキョウの社長だ。
キャリーバッグを牧場の前に止めて、店員に頭を下げている。
「お世話になってます。
やはり、お間違えでしたか。」
高橋は抱えていたお掃除ロボットを社長へ差し出す。
「あー、これです。失礼しました。」
それを受け取り、キャリーバッグからサンプルを取り出す。
サンプルを牧場に放すと、キャリーバッグにデモ機をしまった。
「サイキョウの社長さん。
新製品はいつ発売ですか?」
子供
「あ、これはまだ試作品でして、発売は未定です。」
社長はチャックを閉めながら答える。
「あのう、すみませんが、そちらの新製品はおいくらくらいするものですか?」
母
「そうですねぇ。
発売中のものよりセンサーが多く2割は高くなるかと。」
社長
「そうでしたか。」
母
やはり目星をつけた遠隔操作の掃除機に決めようとしていた。
「社長さん。
試作品てことはこれからもっと強くするんですか?」
子供
「つ、強く?
ブラシの回転数かな?
吸引力かな?」
社長
「いや、何でもないですよ。」
母は息子のジャンパーの袖を引っ張る。
「もっとさぁ、拭き掃除が出来てワックスかけて、ラジコンになってとか。」
子供
「こら。迷惑でしょ。」
母
「ワックスねぇ。
いいアイデアだね。
今度、会社においで、いろいろ強くしようか。」
社長
母は名刺を渡された。