鉄の園 31 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

《イントロ》

手拍子が始まる。

『この町を、出ることはぁ
       しのーびないけぇれどぉぉ。』
電飾ステージで上野が歌う。

ボランティアは歌詞カードを配った。



涙、上り線

1番

この町を出ることは忍びないけれど
私の夢は、あの山の向こう

夜に家を抜け
切符買ったけど
少ない上りを 2本見送った。

母の声に私は
ホームのベンチに隠れたの

駅員さんは言いました。
さっきの列車で発ちました。

母はレールに  手を合わせ
私の無事を祈ってた。

涙、上り線


2番

この町を出たあとは あてもないけれど
花実をつけて、帰ってくるわ

駅員さんの
目配せに
今来た列車に 飛び乗りました。

母の背中に私は
扉の窓を曇らせた。

駅員さんは振りました。
私の列車にカンテラを。

車窓の実家を 掴んでは
そのまま胸に当てました。

涙、上り線

3番

この町を出たあとは寂しいけれど
私の夢は、花実をつけた

綺麗な服で
土産を下げて
変わらぬホームに降り立つと。

母の写真に私は
謝ることしかできなかった。

駅員さんは言いました。
父さん、毎日見えてた と。

小さな二人を 胸に抱え
ホームのベンチで待ってます。

涙、上り線


線路の拍手は鳴り止まない。