鉄の園 30 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

『自分が何をしたか、わかってないようだね。』

『んだ。』

1人のおばさんが腰に手を当て、上野の前に立った。

「好きなだけお殴りください。」
上野は歯を食いしばる。

『お殴りくださいだ?  笑わせるね。』
おばさん

「どうぞ。」
上野

『鉄の掟。
    そんなものはね、鉄クズになったんだよ。』
『んだ。』
『だーれも、守ってねぇ。』
『娘は隣町にくれてやったぞ。』
『それも、これも、ぜーんぶあんたのせいだ。』
『んだ。』

「すみませんっ!」上野

『だ、か、ら。』
『あんたが上野さ出て、みんな自由になったんだよ。』

「・・・え?」

『みんな父ちゃんがおっかねぇから、だーれも町を出なかっただけだ。』
『んだ。うっ殺されると思ってた。』
『あんた、コロンブスのタマゴだよ。』

「私が、」
上野

『そーだよ。
     ほら、あれ歌ってくれ。』
マイクの手を口元にあげるおばさん。

『みんな、ファンだよ。上野ちゃん。』


「ありがとう、ございます。
    その前に、梅屋の写真の駅員さん。
          ひと言、御礼をさせて下さい。」
上野

『駅員だって。』
『いてほしいね。』

岡田さんのことだ。
残念ながら、ここにはいない。

すると、タレ目のテッキーがヒョコヒョコ歩いてきて上野にハグをした。
「・・・・ったね。」
何かつぶやくと、上野は号泣した。

「皆さんありがとうございます。
     上野 明実
         唄わせて頂きます。

    涙、上り線。」


お客さんが線路から拍手する。