「おまえ、警察に通報した?」
犯人が包丁をちらつかせる。
「俺はしてない。
ケータイを川に拾いに行ったり、漫画喫茶にシャワーを探しに行ったり暇じゃねーからな。
あ、そうだ。
お寺の防犯カメラに映ってたってよ。」
「じゃあ坊主か。
おい、寺の前に向かえっ!」
バスの運転手に怒鳴る。
「はいっ。」
運転手がミラーでこっちを見る。
バスはあの寺の前に走る。
『もしもーし、もしもーし。
見つかったって何が?』
課長は会話が途切れても呼び続けた。
フロントガラスからバス停が見えた。
あの子がベンチに座る。
その時
後からパトカーのサイレンが鳴った。
「チクショーッ。
運転を代われ。」
犯人は運転手に運転を代われと腕を掴む。
「あぶないっ!」
運転手はハンドルを握ったまま腕を引かれた。
バスは左に急ハンドル。
≪ブゴォォゴボゴボ≫
ブロック塀を壊しながら進む。