「あらまたぁーーっ!」
「はいはいーっ!」
「大変なことになったぞ、」
「あぁ、クレームですか?
だいたい想像つきます。
始末書を書いてきまーす。
それと、このあと会議ですね?
エアコン入れときましたー。」
「‥‥あ、ありがとう。」
呆然とする上司。
「荒俣さんどうしちゃったの?」
「さぁ?」
いつも見ないふりの社員も注目する。
「おーとっと、
このあと電話がくるんだよな、見積りの書類は?っと。」
≪プルルル≫
女子社員が電話を取ろうとした。
「いいよ、俺だから。
はい もしもしぃ、
はい、荒俣でございます。
お見積もりの件でしょうか?」
「おいおい、用件を聞けよ‥」
上司は荒俣な行動から目が離せない。
「なぜわかったかって?
わかりますよぅ社長。
いつも気にかけてますので。
いやいやそんな、
そろそろお昼が終わってデスクに着く時間ですよね?
ちょうど今、こちらから掛ける所でしたから、」
「なんか、うまくいってる?」
上司もやっと座った。
そのあとは、さらさらと始末書を書いて提出。
クレームは向こうの勘違い、逆に感謝された。
「荒俣さん、すごいじゃない。」
女子社員に久しぶりに声を掛けられた荒俣。
「いやぁ、経験ですよ。」
(何回も経験した気がする。)
「荒俣くん、今日は飲みにでも行こうか?」
上司が声を掛ける。
「はい。」
定時に帰った。
飲み会の席にはプロジェクトチームも集まり、難を逃れた荒俣が称賛された。
そのまま反省会となり、そもそものミスの犯人が浮かび上がってしまう。
プロジェクトチームはその担当者を責める形になっていく。
とうとう土下座騒ぎになり、そこで
「いや、俺が悪い。
俺は彼のアポの件は聞いてなくて、勝手に社長と話をしてしまった。すまない。」
と荒俣が土下座をした。
「ちょっと、何をこんなやつかばってるんですか。」
「荒俣さんが社長とやり取りしてたからクレームを回避できたんですよ。」
「いや、俺のせいだ。」
「荒俣さん、俺のミスだって。」
担当者が泣いて謝る。
「いいじゃねーか、
もう始末書出しちゃったもん勝ちで。」
親指を立てる荒俣。
「そんなぁ、」