その前日
5月20日 16:00
「おいっ、あらまたーーっ!」
会社の上司が立ち上がってデスクから彼の姿を探している。
「は、は、はいっ。」
そこへ駆けつけた荒俣。
「大変なことになってるぞ、例の案件。」
上司は座ることなく荒俣を怒鳴る。
「例の?
いや、あれはプロジェクトチームの」
荒俣は資料を取りにデスクに向かおうとしたが
「プロジェクトチームのせいにするんじゃないっ、これはお前1人の責任だ。
わかったな。」
「ですから、」
「わかったな。」
「はい。」
(ん?)
「どうした?」
「あのぅ、前にもこんなやりとりありましたっけ?」
荒俣が不思議に思って聞いた。
「さあな、あったかもな。
毎日のようにお前さんを怒鳴ってるんだから。」
「は、すいませんです。」
「しかし、この案件のクレームは今受けたばかりだ。
お前の尻拭いの会議をしなくてはならないんだ。」
「本当に申し訳ありません。」
その後、荒俣抜きでプロジェクトチームは会議室へ入って行った。
荒俣は自分のデスクで資料をめくってブスッとしている。
(おかしいなぁ。
課長の言ってること前に聞いたんだよなぁ。
何で怒られた時だっけなぁ)
他の社員も横目で見るだけで声をかける者はいない。
「死にてぇ。」