《キュンキュンキュー、ジィィーー、》
SUVから高音が発せられる。
さすがにヤクザも耳をふさぐ。
護衛は左右をキョロキョロと見ている。
『隼人、来るぞっ!
トラックの裏に走れ!』
突然、雷輝の声がした。
隼人と呼んだ。
何かが来る。
それを雷輝は、今、ハッキリと思い出したのだ。
隼人はクロウパッドを抱えてトラックの荷台の影にうづくまる。
それから腕時計を手のひらで覆った。
《・・・・》
音はしない。
しかし確かに今、SUVはパルス砲、いや、
パルス大砲 を発射したのだ。
ヤクザ
「あ、なんだ?ハッタリかまして。」
次の瞬間だった。
《チャリチャリチャリポフゥチャリ、ポフゥ》
SUVの前から放射状に天上の蛍光灯が割れていく。
《シャラシャラ》
護衛や、ヤクザ達の上からガラスの雨が降る。
「ギャアアア、」「あー、目が、」
ヤクザ達は叫ぶ、目の中にガラスが刺さっている者もいる。
護衛達は蛍光灯の無い壁際に避難していた。
駐車場は灯りひとつ無い 真っ暗な空間 となる。
《ブオオオオー、キョッ》
SUVは急加速
《ブツ、ダフ、ドフッ》
悶絶するヤクザ達を容赦なくはね飛ばした。
次に、女組長が乗せられてる、萬田の専用車のバンパーにゆっくり接近する。
《グツン》
SUVの鉄のアニマルガードで樹脂製のセダンのバンパーを押す。
車の中のヤクザ
「ば、バカヤロー。早く押し返せ。」
リアシートで本間組長の隣にいる男は、運転席の後ろを蹴る。
運転手
「エンジンが、かかりません。
セルの音もしませんっ。」
男
「なんだとぉ?
ブレーキ、ブレーキ踏んでろ!」
《グルグルグルグル、フォーーン》
SUVはセダンをゆっくり押す。
《クォーーークククォー》
タイヤのスリップする音とゴムの焼ける匂いだけが真っ暗な駐車場に撒かれる。
運転手
「ライトもダメです。」
《グルグルグルグル》
SUVはそのまま駐車場のスロープまでセダンを押して上る。
スロープに止めたトラックの横をゆっくり
と通りすぎる。
そのまま2階へ押し上げた。
車のヤクザ
「こっちは人質が居るんだぞ!
この女がどうなってもいいのか、コラァ‼」
SUVは止まる。
車のヤクザ
「ほら、手が出せなくなった。」
SUVは少し下がった。
車のヤクザ
「下がれ下がれ、アホンダラ。」
シェフ
「まずいな。」
隼人
「あの馬鹿、怒らせやがって。」