獣道を一例に並び、歩いていく。
先頭は原島さんで、蛇よけに気の棒で地面を叩きながら行く。
蛇は嫌いだ。
草むらが、ササッと揺れると気になってしまう。
俺の前の高井さんは腰ひもを掴みながら歩いている。
その前の兵士は真っ直ぐ前を見て歩いている。
早くフエさんに会いたいだろう。
俺は気になっていた。
家族のことだ。
海外にいる家族は、日本人と判れば拘束されるのだろうか?
しかし、世界中に兵士を配備するのは無理だろう。
海外の情報が入らんから確認できない。
俺も、ずっと胃が痛い。
あの兵士が発狂するのも無理はない。
防空壕に着いた。
原島さんがカメラの木にまばたきをしている。
鉄の扉が少しだけ開き、その後大きく開いた。
尾行がいないか確認してから防空壕に入る。
兵士が入ると、日本人は驚きながら後退りした。
逆に、ヨーコさんとフエさんは一歩前に出る。
「フゥェイ!」父
「お父さん。」フエ
涙の再会だ。
親子。
しかし、今は立場が違う。
同じ中国人。
だが
非難者と兵士。
追われる者と追う者。
フエさんから会話の内容を聞いた。
「お父さん。なぜ、こんなことを?」フエ
「フゥェイ。
お父さんはお前に会いたかった。
浄化なんかどうだっていい。
日本のお前が心配で心配で、テロリストに志願した。
お前にすぐ帰るように言いたかった。
手紙は検閲で引っ掛かるので日本には出せない。
電話も盗聴されているかもしれない。
だから、
テロリストに紛れて日本に入った。」
「お父さん」
「フゥェイ!」
防空壕の入り口で、父はフエさんを抱きしめた。