深夜、日付が変わろうとしている。
≪リリーン、チリチリン≫
時報の代わりに鈴の音色が聞こえた。
軒下の風鈴だ。
風が強くなったのを知らせてくれた。
台風だ。
昼間のテレビで天気予報が伝えていた。
こんな日に出撃した自衛隊を可哀想に思っていた。
あれから半日過ぎた。
自衛隊は帰って来ないのだろうか?
そうだ。
沖縄の海の米軍の援護もない。
この辺りで見かけないだけで、実は壮絶な戦いをしているかもしれない。
昼間のような爆発音はしない。
嵐の前の静けさか。
風鈴の音色、ラジオの中国語だけが聞こえている。
その静けさに心臓の高鳴りが加わる。
あの戦車の砲撃したビルを思い出していた。
この地域の電話局のビルだ。
これで電話はもちろん、メールやツイッター、ラインまでシャットアウトか。
奴らは特別な通信機を使っていたな。
耳に手を当てて聞いていたから、誰かが指示を出しているようだ。
先回りや待ち伏せが無かったのは、奴らがマイクを持っていないからだ。
通信機を手に入れよう。
「おなか空いたわ」ヨーコ
「そだねー。わたし、下を見てくるね。」フエ
「ねぇ、オッサマ。」
ヨーコが肘で俺をつつく。
「奴ら、飯はどうしてるんだ?」
どこかで炊き出しがあるのかもしれない。
「ちょっと、どっちの心配してんのよ。」
ヨーコ
「え?」
あ、
フエさんに付いていけということか。